突然ですが、あなたは今から「チキンカレー」を作ることになりました。
どのような事をしなければならないでしょうか?
1. 鶏肉、野菜を一口大に切る
2. 鍋でそれらを炒める
3. 水を加え、材料が柔らかくなるまで煮込む
4. ルーを入れ溶かし、弱火でとろみが出るまで煮込む
5. ライスを器に盛り、カレーをかければ出来上がり!
頭に浮かぶタスクはざっとこんな感じだと思います。
しかし、チキンカレーを作った事のない人がこのレシピだけを頼りに作ったら?
またはそんな人たちがグループでカレーを作ったら?
このカレー作りプロジェクトは確実に失敗すると言えるでしょう。
例えば・・
・鶏肉、野菜を一口大に切る
↓
1.「鶏肉の部位はどこ?」
2.「野菜はじゃがいも、玉ねぎ、人参でいいのかな?」
3.「一口大ってどのくらいの大きさなの~??」
などなどメンバー間の見解の統一が取れず、カレー作りは空中分解に・・。
実はこれ、下記のような傾向を持つWeb制作の現場においてもまったく同じ事が言えるのです。
1. プロジェクトに携わること自体が企業担当者にとって初めてであることが多い。
2. プロジェクトに携わるメンバーは複数人が基本。
そこで、プロジェクトを滞りなく進める為には、
出来るだけ細かく、タスク(作業項目)設計を行うことが非常に重要なってきます。
ということで、今回はプロジェクトが必ず上手く行く【タスク設計】について、Webディレクターの岡本がご紹介させていただきます。
出来るだけ細かくタスクを洗いだす事を「WBS(Work Breakdown Structure)」と呼びます。
分解すると、「Work(仕事・作業)」「Breakdown(分解)」「Structure(構造化)」となりますね。
つまり、この段階ではまだ日付や期限については触れないため、スケジュールとは似て非なるものという事です。
むしろ、WBSを元にスケジュールや見積りを作成するイメージの方が正しいでしょう。
では、WBSはなぜ行う必要があるのでしょうか?
プロジェクト進行を円滑に進めるためというのは大きな理由ではありますが、実はそれだけではありません。
WBSをしっかりと洗いだすことが出来ていれば、それを元に日付・期限を設けスケジュールを作成することが可能です。
むしろせっかくWBSを作成したにも関わらず、別にスケジュールを立てる事は無駄な作業であり、漏れが発生する可能性があるためやめるべきです。
細かくタスク設計ができていれば、各作業に対しての成果や責任が明確となります。
また、別なメンバーが加わる場合や万が一途中でプロジェクトから外れる場合でも、新しいメンバーにタスクを渡しやすくなります。
タスクが明確になると、それに必要なツールや開発環境などの計画が立てやすくなります。
ツールや開発環境などは、後になってから急に用意する事が難しい場合が多いため、それを防ぐことも可能となります。
おおまかなタスク設計では、作業にかかる時間について十分な見積りができません。
無理の無いスケジュールを組む為にも、あらかじめタスクを細かく、明確にしておく必要があります。
上記4つが明確になると、何をいつまでに、どのくらいの工数かけて行う必要があるか。今何が足りないのかが明らかになります。
これはプロジェクトの進行がスムーズになるだけでなく、関わるメンバーの不安を払拭する材料にもなります。
また、プロジェクトメンバー間でのコミュニケーションギャップを無くす事にも繋がります。
発注側と受注側のズレをなくす事で、無駄な作業の発生や抜けを未然に防ぐことができるのです。
WBSを作成するには、まずプロジェクトの行程を大まかに分類し、そこからさらに細かく分類をしていく。この作業を繰り返します。
タスクの洗い出しは、当社であればWebディレクターが担当しますが、かなり粒度の細かいタスクの洗い出しについては、各セクションのスタッフにヒアリングを行うべきでしょう。
また、お客様のタスクも書き出す必要があります。
スケジュールを作成する段階で、お客様のタスクに抜けやダブりが生じると、スケジュールや予算に影響するだけでなく、ご迷惑をおかけする事になりかねません。
それでは、WBSの書き方についてのコツをいくつかピックアップしたいと思います。
先ほどのカレーを例にすると分かりやすいですが、まず、鶏肉・野菜を一口大に切るというタスクに問題があります。
このタスク設計の何が良くなかったかというと、鶏肉という情報と野菜という情報のレベルが一致していない事です。
チキンカレーなので、肉の中でも鶏肉と決まっているのに対し、野菜については明確な指示がありません。揃えるのであれば「鶏肉、じゃがいも、玉ねぎ、人参を一口大に切る。」とします。
また「鍋で"それら"を炒める」や「水を加え、"材料"が柔らかくなるまで煮込む」など同じ物を指しているにも関わらず名称が異なっています。
これもまた、プロジェクトメンバーに誤解を与える可能性があります。
途中で加わったメンバーに「それら」という名称が通じるでしょうか?
「材料」ということでメンバー間の認識の差異が生じないでしょうか?
名称はWBS内できちんと揃える必要があります。
少しWBSの話から外れますが、プロジェクト進行中に使用する言葉、名称は可能な限り統一すべきです。
さらに上の作業に対して細かくタスク分解していきます。
1. 鶏もも肉を100g用意する > 鶏肉を一口大に切る
2. じゃがいも(メークイン)を2個用意する > 洗う > 皮をむく > 一口大に切る
3. 玉ねぎを2個用意する > 皮をむく > 一口大に切る
4. 人参を2本用意する > 洗う >皮をむく > 一口大に切る
こんな具合です。タスクによっては種類や行程が違ってきますが、ここまで書き出しておけば担当者が理解できる可能性はグンと上がるでしょう。
ここでの子タスクの作成は経験や知見、時にはひらめきが必要となってきます。
一人である程度書き出したら、専門スタッフや別のディレクターに確認するなどして、出来るだけ作業の抜けが無いようにします。
多くのタスクには順序が存在します。Aを行わないとBは出来ない。などです。
Web制作の現場でも、サーバーを用意しないとWordpress(CMS)がインストールできない。と言うような事を良く聞きます。
WBS作成の際は必ずタスクの順序・関係性について確認しておく必要があります。
それでは、以上の事をふまえて作った、理想的なチキンカレー作りのWBSを参考までにお見せしましょう。