プログラマといえばインド人!?
グローバルの開発業務を支えるインドIT企業の秘密と魅力とは?
ナマステ!志水 哲也です。
暮れも押し迫る12月15日からの1週間、インドのプネーにWeb開発を主軸とするIT企業を訪問しました。ロストバゲージがあったり交通事故にあったりと、個人的にも面白い体験には事欠かない旅となったのですが、それはさておき。
滞在中に出会った人々や交わした会話の中に、これからの私たちの仕事への向き合い方について考えさせられることが多くありました。特に、Web開発やBtoBでのデジタルマーケティングを考える上では重要です。今回は海外Web事情として発展著しいインドITの秘密に迫ってみましょう!
今回訪れた街、プネーは人口約500万人で、インド経済の中心であるムンバイの南170kmに位置する工業やビジネスの中心地です。
プネー大学の他にも17の工科大学など多くの学術・研究機関が存在することから、IT産業やソフトウェア開発の中心地として発展を遂げています。インド政府によりIT開発の中心地と位置付けられていることもあり、ハイテク機器で有名なバンガロールと並んで「東のシリコンバレー」とも呼ばれています。
Hinjewadi、Talwade, Kharade, Pune It Park, Magarpatta Cityの5つの巨大ITパークがあり、毎年8万人に登る技術系卒業者を吸収しながら拡大を続けているそうです。
私たちが今回訪問したHinjewadiでも新フェーズの建設が続けられており、その勢いを肌で感じることになりました。
理系の若年層人口が多い | ビジネス語として英語が得意 |
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インドの公用語は英語と思われている方も多いと思いますが(私もそうでした)、国の公用語は「ヒンディー語と英語」です。実際には州によって地域の言葉が公用語となっており、憲法に指定されている言語は22に及ぶとのことで、それぞれの地域言語は我々が考える「方言」というレベルではないそうです。お互いに通じない地域の言葉を補完して、連邦を維持するためにヒンディー語が第1公用語となっているんですね。
ちなみに、日本でインド映画の火付け役となった「ムトゥ 踊るマハラジャ」のセリフは、ヒンディーではなくタミル語なんだそうです。90年代後半に映画館で観て以来、主演のラジニカーント(Superstar)のファンである私としては、インドの友人に「あれはボリウッド映画じゃなくて、タミウッドだよ」と言われたのはショックでした。
ヒンディーは北部を中心に話されてきた言葉で、南部では通じないことも多いんですね。国土が広くその成り立ちも複雑なインドでは、実に多くの言葉が話されていることを再認識しました。
全てのインド人に理解しやすい統一言語に設定されているヒンディー語。テレビドラマやCMで(おそらく)ヒンディーを多く聞いたのですが、街の標識やサイン、新聞や雑誌などの活字には英語が多かったように思います。
高等教育や研究においてはヒンディーに翻訳される文献が少ないこともあって英語が主流。都市部においてはビジネスで英語が使われる頻度は高いそうです。
「ヒングリッシュ」と言われるように、インド英語には独特なイントネーションがありますが、慣れてくれば聞きやすくなります。ヒンディーは無理でもインド英語なら、とこちらも思わず真似してしまうのが楽しいところです。
階級の高い人ほど、多くの言語でコミュニケーションができる。そんなインド人ビジネスマンのバックグラウンドが見えてきました。地域や階級と多くの言語、様々な壁が存在する12億人の国では、積極的なコミュニケーションが必要です。人々のバイタリティを感じました。
・インドはゼロの概念を生んだ国
・インドの小学生は九九ではなく、2桁の暗算を暗記している
というのは、私たちがよく聞く「理系国民インド人」のイメージですよね。これについても確認してみたところ、確かに2桁も覚えるそうです。ただし1×1〜99×99までを丸暗記するわけではないとのこと。(彼の経験では)12×12までだったとか。これがインド人のITスキルを決定する要因ではないと思うけど…。というのがあるインド人ビジネスマンの意見でした。
ITパークで働いているインドの人たちは、多くの面で他の仕事に従事している市中の人たちとは異なります。それは収入面やライフスタイル面、その根本でもあるカースト面での違いでもあるようです。
頭が良くて恵まれた条件の若者たちが、厳しい伝統や世襲の束縛を逃れて自分らしく成功する道として、頭脳と腕だけで勝負できるITの業界に流れ込んでいるんですね。現地で聞いた実際の収入の違いを含めて考えれば、それは当たり前の現実でした。
「僕がこのプログラムの仕事をする意味は、一体何なのですか?」
なんて、他人に聞く人にはここでは出会いそうにありません。
一方、日本では「労働集約型」の仕事は人気がありません。人気がなければ、優秀な人材が開発の現場に飛び込む機会が減ってしまい、業界のイメージも下がってしまう。そんなスパイラルが発生してしまうのではないでしょうか。
インドのIT技術者や経営者とお会いして、その差は一般に言われている「数学力」の違いというより、この職種で仕事をする人材のレベルとモチベーションの違いであるように思いました。
・グローバルなマーケットに対して
・数学的論理思考の強いクラスの多くの人材が
・英語でのコミュニケーションのスムーズさを武器に
・高いモチベーションを持って
・知的労働集約産業を引き受ける
・そのキャパシティを拡大している。
それが、インドITの強さなのでしょう。
今回訪問したe-Zest Solutions社のCEOとは、今年10月に開催されたINBOUND2015で知り合いました。HubSpot社が本社所在地であるボストンに15,000人のマーケターを集めたマーケティングカンファレンスです。
つまり e-Zest社はHubSpotのユーザー、パートナーでもあるのです。
4つの大陸にクライアントを持ち、インドに本社がありながらグローバルで営業活動を行う同社はインバウンド・マーケティングの実践者であり、そのポイントについてお話を聞いてみたいというのが、訪問目的の一つでもありました。
今後はパートナーとして「日本企業が海外の顧客を開拓するためのBtoBマーケティング」を推進するためのチームづくりにチャレンジしたいと考えています。
今回、グローバルで活躍するインドIT系企業から学んだのは
・プロジェクトの標準化スキル
・勤勉さとノウハウ吸収力
・英語でのコミュニケーションスキル
といった強みを最大化する取り組みです。
システム開発にとどまらず、UXやUIデザイン、データドリブンなマーケティングにも、グローバルからのフィードバックを取り入れ、チームの考えを浸透させることを大切にしている点に強く感銘を受けました。
彼らはグローバルにサービスをデリバリーすると同時に、グローバルから日々学んでいるのです。
インド到着時にスーツケースがロストしてしまったため、スーツもネクタイもありません。機内用に着込んだスウェットパンツ姿でいることも忘れて、インド流プレゼンテーションに思わず拍手を贈っていました。
そんな私たちを温かく迎えてくれたCEOのDevendraさんとe-Zest Solutionsの皆さん、本当にありがとうございました。2016年はインドの仲間と一緒に、グローバル化に向けた新しい取り組みができる年にしたいと考えています。
2015年もご愛読いただきありがとうございました。
皆さんもどうぞ、よいお年をお迎えください。