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「目的ドリブン」なCRM選定のための5つのステップ

作成者: タービン・インタラクティブ|2017年10月06日

CRM導入を試みる企業は多いのですが、導入後にうまく活用して成果を上げられる企業はそれほど多くありません。その理由は、「システムありき」CRM導入になっていることにあります。

CRMを長く使い続けるためには、自社がなぜCRMを使う必要があるのかという「目的ありき」CRM導入が求められます。今回は、CRMを導入するための5つのステップをご説明します。


ステップ1:CRMが「システムありき」でないことを理解する

CRMとはITありきで捉えられることが多いのですが、その本質は「既存顧客を大事にする」という理念であり、システムありきではないことを理解する必要があります。言われてみれば当たり前の話なのですが、実際にCRM導入を考える段階になると主客が転倒してしまうケースが少なくありません。

そもそもCRMとは、Customer Relationship Managementの略語です。日本語では「顧客管理」「顧客関係管理」と呼ばれることが多いですね。一般的に、CRMとは既存顧客を維持・拡大する戦略の一つとされています。顧客と密にコミュニケーションを取ることで関係を良好に保つとともに、そのニーズに合った商品を提供できるようにするマーケティング手法です。

 従来のように、大量の広告を投入して新規顧客を開拓するマーケティング手法が行き詰まりを見せる中、1990年代に入って「顧客データを分析し、既存顧客を逃さない」CRMが注目を集めました。その背景には、ITの進歩によって顧客データを収集・蓄積・分析・活用するための技術が飛躍的に発達したことが挙げられます。

 このように、CRMが注目を浴びた裏にはITの進歩が不可分だったのですが、CRMの理念自体は新しいわけではありません。データの活用自体は新しい発想ですが、「顧客を大事にしよう」という理念自体は少なくとも日本の商売人が昔から持っていたものでしょう。継続的な取引のある顧客を軽視する企業は、そもそも存在できません。

 CRMの実現のためには、データを収集・蓄積・分析・活用するためのシステムを導入することが不可欠です。しかし、システムの導入は方法論の問題であり、CRMの戦略自体はシステム抜きに持っているべきものです。

 顧客の何を知り、どう活用するかを考えてからシステムの選定・導入をするのが筋であり、「システムありき」のCRM導入では失敗してしまいます。導入コストとランニングコストがかかる割に、成果を上げられない企業が多いのは、考え方に問題があるからなのです。

ステップ2:マーケティング~営業の業務フローを可視化する

CRMの基本について理解したなら、次は既存の業務フローを洗い出しましょう。CRMの選定に入る前に、自社の現状がどのようになっているかを調査・分析します。

 CRMで何をしたいか決めるためには、現状の分析が不可欠です。CRMを既存の業務フローに合わせるべきか、それともCRMの仕様に業務フローを寄せるべきかの判断もこの段階で検討できます。

 顧客を集客してから成約に至るまでのマーケティングおよび営業のフローを可視化し、課題を浮き上がらせることが目的です。CRMは課題を解決するために導入するのですから、課題が分かっていないと導入目的がぼやけてしまいます

 既存の業務フローが明確になっていないと、CRMを導入しても無理矢理カスタマイズを重ねることになってしまいます。実装の最終盤になって仕様変更や修正が立て込むのは、システム開発の典型的な失敗パターンなのですが、CRM導入においても同じパターンをなぞる傾向があります。

 CRMの選定や導入の話をする前に、自社の話をしましょう

ステップ3:業務の「あるべき姿」を関係者間で共有する

まだ自社の話で、CRMの話はしません。現状分析の次は、業務フローの「あるべき姿」を検討することが必要です。特に、CRM導入によって業務に影響を受ける各部署で、その認識を共有しましょう。

 既存の業務フローについて検討しているうちに、どこに課題があってどのようにしたいか意見が出てくるはずです。ただし、その意見を関係部署全体で共有しなければ、「マーケは楽になったかもしれないけれど、営業はフォローしきれないほどリードができてきつくなっただけ」ということになりかねません。

 少なくとも営業とマーケティングの両部門、そして運用を担当するであろうシステム部門、場合によっては法務や経営企画など、関係各部署で明確なイメージを共有してからCRM導入に取りかかることで、スムーズなローンチと運用が期待できます。

 CRM導入失敗の一因として、関係部署の連携が取れていないことも挙げられます。各部署の対立関係がCRMに反映されてしまい、業務フローの全体最適ではなく部分最適だけが追求されてしまうケースがあります。部署間に対立がある場合は、役員レベルのトップダウンなどによって何とか「あるべき連携関係」を描き出さなければいけません。

 ステップ3までがもっとも「痛み」を感じる部分で、それゆえに議論がスキップされがちです。ここまでを避けずに直面できるかどうかが、CRM導入の成否を分けます。

ステップ4CRMシステムの目的とKPI、予算などを可視化する

少しずつ、話を具体的にしていきます。CRMが何のためにあるべきかを理解し、自社の既存の業務フローとその問題点を浮き彫りにして、それをどのように解決するのか社内で検討できたら、いよいよシステム導入の話に入ります。

 システムに求めるもの、KPI、予算などを決めます。特に、KPIは重要です。成約率のアップなのか、集客数のアップなのか、マーケティングから営業へ引き渡すリードの質ないし量の改善なのかなど、KPIの決め方によってCRMのあり方も変わってきてしまいます。

 この際、システムに求めるものやKPIが、現状の課題を解決し「あるべき姿」を反映した物になっているかチェックしましょう。議論の過程で、もともとの「あるべき姿」から遊離してしまうこともあります。

 たとえば、「あるべき姿」が「成約率のアップ」なのに、結果的にマーケティング主導の議論によって「メルマガ開封率のアップ」がKPIになってしまうことがあります。外から見ているとおかしさが明白なのですが、内部にいるとそのおかしさが分からなくなるものです。

 ここまで明確になれば、CRM選定もやりやすくなります。

ステップ5:ツール/システムを選定する

この段階で、やっと最適なCRMについて検討を始めます。業務フローにおける現状の課題と望ましい像を自分たちが明確に理解して、それをベンダーにも提示できれば、比較基準がはっきりします。結果として、選定も容易になるでしょう。

 ベンダーが業務フローを理解でき、また「あるべき姿」がシンプルであればあるほど、導入するCRMも複雑化しにくく、導入プロジェクトにも手戻りが生じづらくなります。

 逆に言えば、選定・導入段階でつまずくということは、何かしらステップ4までで議論の足りなかった部分があるということを意味しています。その場合、ステップ2の現状分析とステップ3の「あるべき姿」を詰めてから改めて進めるべきでしょう。