ペルソナと検索すると「ペルソナは古い」などという検索結果も出てきて、不安になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これは、生活者や購買プロセスが多様化し、顧客像が細分化してきていること、それに対応すべく「One to Oneマーケティング」が浸透してきたことなどが背景にあります。
また、インターネットの普及によりユーザーは購入前にWebサイト上で検索・検討を行うことが一般的になってきました。BtoBマーケティングにおいては、営業担当者に会う前に、顧客側で検討を検討プロセスを進めていることが増えています。
ここで有益な手法がインバウンドマーケティングです。Webサイトやブログ、ソーシャルメディアなどを活用し、情報を探している見込み客にコンテンツを見つけてもらい、彼らが抱える課題に対し有益なコンテンツを適切なタイミングで提供し、顧客化へと導きます。
このように「実際に会えない」見込み客も増えているからこそ、顧客視点のマーケティングを行うためにも重要な「ペルソナ」。
本記事では、ペルソナ作成方法から活用シーン、BtoB特有の注意点をご紹介します。
ペルソナ(Persona)は、ラテン語で「人格」や「古典劇で使われる仮面」などの意味があります。心理学用語では演者が仮面をつけるように周囲に見せる自分の姿(人間の外的側面)をペルソナとよび、転じてマーケティングにおいては「架空の利用者」、つまり「サービスや製品を利用する典型的な顧客像」を指す言葉として使われています。
この「典型的な顧客」がどんな人物か、興味関心を持つきっかけや購買に至るまでを共通言語化していくことで、自社商品のプロモーションやマーケティング戦略を立てる際に、いつ誰に何を伝えるべきかが非常に明確になります。
関連記事:【サンプル有】ペルソナとは?インバウンドマーケティングの視点から解説
マーケティングや営業活動を行う際、どのようなターゲットにアプローチしていくのかを考えますよね。ペルソナ設定はしていなくても、自社が訴求すべき「ターゲット」は設定されている企業は多いのではないでしょうか。
ターゲットは、想定する顧客を年齢や性別・消費傾向などからセグメントした「集団」をさします。ペルソナは、名前や居住地・趣味やライフスタイル・悩みなどを設定し、あたかも実在する「個人」のように顧客像を作り上げます。
ペルソナ設定の目的は「顧客の目線に立ち、ニーズを深く理解した上で、最適なマーケティング活動を行うため」です。
ペルソナは架空のキャラクター設定となりますが、実在しているかのような人物像まで解像度があがれば、マーケティングや営業に関わるそれぞれの人のコミュニケーションや施策がブレずに効果的な判断を行うことができます。
「30代男性に営業メールを打つ」という設定よりも、「〇〇会社の山田さんに営業メールを打つ」方が、内容やアピールポイントを的確に判断できますよね。
相手が明確になるほど、「相手(顧客)の目線に立って考えられ、提案すべきニーズが分かる」ためです。
ペルソナ設定により、この顧客像を「共通言語化」することで、下記のように効率的なマーケティングや営業活動が行えるメリットがあります。
・タイミング、コンテンツ、チャネルが最適化を判断できる
・自分以外の部署メンバーや別コンテンツで情報発信する際も判断がブレない
このように、顧客像を具体的に描き、ユーザーの思考や購買行動を紐解いて、ユーザーのニーズを理解したうえで戦略や施策を最適化していきましょう。
これまでペルソナは「典型的な顧客像」として、主に「人物軸」でお話ししましたが、BtoBマーケティングでは「企業軸」も抑えることがポイントです。
BtoBでの商品購入・成約は、個人の趣味嗜好で意思決定できる可能性は極めて低く、その背景には企業や部署の属性や課題などが深く関わっていくからです。
冒頭で、生活者や購買プロセスが多様化し、顧客像が細分化していることに触れました。そのため、ペルソナを1つに絞ってしまうのはリスクでもあり、ペルソナ設定は古いという考え方もあるかもしれません。
ペルソナは、必要に応じて複数設定することもあります。例えば「マーケティングオートメーションの導入提案」でも、デジタルシフト推進のためにWebサイト構築から検討しているパターンと、すでにWebサイトがあるがWebマーケティングや営業強化のために検討しているパターンでは顧客像が少し異なります。課題やリテラシーも変わってくるため、訴求するメッセージや提案するサービスプランが変わってくるのです。
このようにペルソナは常に1つだけとは限りません。事業拡大のために複数のペルソナが想定される場合、まずは2つか3つに絞り、メインとサブを決めておきましょう。そして、取り組む施策がどちらのペルソナに向けたものか、あるいは両方を網羅した施策やメッセージなのか、都度認識を揃えておくと混乱せずに活用できるでしょう。
ペルソナ設定は関係者間での共通認識を作ることですから、できれば複数名でディスカッションしながら進められると、作成の過程でよりイメージが湧き、設定後も活用しやすくなります。
共同作業で進められなかった場合は、実際の顧客例などを当てはめていくと、作成に携われなかった関係者もスムーズにイメージできると思います。
では、どのようにペルソナ作成を進めたらよいのでしょうか。
まずは、改めてターゲットを明確にしましょう。
現在狙っているターゲットの業種や企業規模などの整理に加えて、現在の受注状況などから、ターゲットの軌道修正は必要ないか、複数あるターゲットのうち最も注力する層はどこかなども整理しましょう。
ペルソナ作成にあたり、1で定めたターゲットをより具体化するための情報を集めましょう。
実際に自社製品を購入・成約している顧客のうち、有益なペルソナとなるケースを洗い出してみましょう。ここで気を付けたいのは「大口顧客」などの契約内容にのみ注目するのではなく、購入・成約までプロセスを含めて選ぶことです。
例えば、「社長の紹介で決まった大型案件」など、再現性があるでしょうか?
もちろん契約内容や継続状況も大事ですが、自社の製品がマッチしているが未だ購入・成約に至っていない見込み客に向けてアプローチするには、1で定めたターゲットのうち、再現性のある検討購買行動を経ており、かつ優良顧客化が見込めるケースを分析していくことが有益です。
おすすめしたいのが、実際の顧客の声を聴くことです。
どうして自社を選んだのか、きっかけや決め手は何か、実際に導入した後はどうかなど、営業する側からは見えてこなかった情報があるかもしれません。
前任部署からの課題や、意思決定までのネックポイントなど、リアルな声がマーケティング活動のヒントになることがあるからです。
顧客インタビューが難しい場合は、直接顧客と接している営業担当やカスタマーサービス、お客様の声などのアンケート情報も参考になります。
では実際に、ペルソナを固めていきましょう。こちらがペルソナ設計のテンプレート例です。
BtoBは、人物軸だけでなく企業軸も設定します。進め方としては、ターゲットの企業項目から設定し、その企業のどういった職種・役職の方にアプローチするのかを掘り下げていくと構築しやすいのでおすすめです。
実際に作成したイメージがこちらです。
いかがでしょうか。「製造業をターゲットにする」と会話しているときよりも、実際にアプローチする際のイメージが湧いてきたのではないでしょうか。
では、設定したペルソナは実際にどのようなシーンで活用できるのでしょうか。
例えば「プロモーション」です。出稿イベントや広告掲載先は、対象業種やデモグラフィックデータからも選定できますが、実際にペルソナを設定した際に見えてきた「情報収集のスタイル」や「日ごろの課題・悩み」などから、今までとは違うアプローチが選択肢に増えることもあります。
「コンテンツ企画・制作」は分かりやすい例ですね。オウンドメディアや自社サイト、イベントなどのコンテンツを作成する際に、ペルソナが抱えているニーズや検索しそうなキーワード・テーマを具体的にイメージすることができると思います。
イベントやホワイトペーパーなど、コンテンツ毎に制作担当者が異なることも多いですよね。ペルソナがしっかり共通イメージを持てていれば、自社から発信するメッセージや顧客への提案を一点クオリティに保つことができます。顧客からは、同じ企業から統一されたメッセージや提案を受けるので、信頼も寄せやすいですよね。
また、ペルソナは「セールス領域」「サービス開発領域」などマーケティング以外の業務においても活用することで、業務全体を通して一貫した顧客体験の提供に役立てることができます。
このように、ペルソナ設定はマーケティングを最適化するための起点でありますが、顧客とのコミュニケーションや提案という意味では、広く活用シーンが生まれるわけです。
すでに営業やマーケティングチーム内で積み重ねていた経験から、だいたいの顧客イメージは持てているので、わざわざペルソナ作成は不要だという声もあるかもしれません。
しかし、その顧客の行動やニーズは数年前と変わっていないでしょうか?
自社商品だけでなく、顧客となる企業の市場や仕入れ調達環境も目まぐるしく変わり、見込み客の情報収集方法や検討ポイントは変わっているかもしれません。
ペルソナという「典型的な顧客」は、その人物が商品やサービスに興味を持ち、比較検討を経て成約(購入)に至るまでのプロセスとともに活用します。これをカスタマージャーニー(バイヤージャーニー)と呼びますが、その購買行動も年々変わっています。
皆で追いかけていた「顧客イメージ」は、いつの間にか様々な解釈が生まれているかもしれません。そのためにも、言語化して共通認識を持つことは非常に重要です。
これはペルソナを作成した後も同じことで、定期的に自社の顧客像とその購買行動をアップデートして、関係者内で認識をすり合わせていくことも大切です。