2020年以降、BtoBのオンラインシフトも進み、インターネット上で自社への送客をはかる「Web集客」は顧客獲得の重要施策となっています。
Web集客は、展示会などのオフライン施策に比べ、低コストで導入しやすい反面、多種多様な手法があるため、自社の状況や目的を見据えて設計することをおすすめします。
広告やSEOなど、手を付けたものの成果を実感しきれていないWeb施策はありませんか。Web集客は、ポイントさえ抑えれば継続的に顧客獲得が可能な手法です。今回は、Web集客手法の基本から、成果を上げるポイントまでご紹介します。
ユーザーの購買行動にもインターネットでの情報収集が当たり前となり、検索行動が定着していますね。ここでBtoBビジネスを行う企業の、ある担当者(見込み客)の行動プロセス例を見てみましょう。
企業内で抱えている課題に対して有益な解決策を探しているとき、何らかのきっかけで商品・サービスの存在を知り、関心を持った見込み客はまずインターネットで情報を集めます。商品名や企業名、もしくは解決したい課題や機能で検索をかけ、コーポレートサイトやサービスサイト、外部メディア・口コミサイトをチェックするのは、この担当者も同じです。
そして様々な情報を集め、複数の類似商品を比較検討しながら、実際にコンタクトをとる企業を絞り込んでいきます。つまり、Web上で適切な情報発信をしていなければ、見込み客の検討にのることができず、知らないうちに選択肢から外されてしまう可能性が高いのです。逆を言えば、効果的なWeb施策を整えることで、商品やブランドの特性をしっかりと認知され、見込み客の方から関心を寄せてもらえるのです。
コーポレートサイトを中心とした情報発信を多くの企業が行なっていた頃から変わり、Webを使った集客施策はどんどん多様化しています。見込み客や集客ターゲットの行動傾向、達成したい目的、かけられるリソースにあわせて複数の施策を組み合わせましょう。
SEOとは、検索エンジン最適化( Search Engine Optimization )を指します。端的にいうと「検索結果の表示画面で上位に表示させ、流入を増やすための対策」です。
何かを検索したとき、検索結果を上から順に閲覧しませんか? 検索結果は基本的に上位にあるほどクリックされやすいため、競合他社より上位に表示されることは重要です。上位表示の条件はGoogleなどの検索エンジンに「ユーザーに有益な情報をもたらすサイト」と評価されること。その評価要素は200以上になります。
それらを網羅し万全の対策を講じても、SEO対策は成果が出るまで数カ月かかることもあります。Web上では膨大な数のサイトが日々変化しており、検索エンジンから評価を受けるにも時間がかかるからです。
先ほどお伝えした通り、Webサイト流入の多くが「検索」起点である以上、SEO対策は避けては通れません。自社商品を検討するであろう見込み客が検索するキーワードでは、上位に表示されるよう整えておきたいところです。
また、社名や商品名だけでなく、見込み客が抱える悩みキーワードから流入させ、悩みを顕在化させるコンテンツを用意し、解決策(自社サービス)を認識してもらうこともできます。ターゲット向けのオウンドメディアがなくても、自社のWebサイト内に用意することもできるでしょう。
そもそも「ユーザーに有益な情報をもたらすサイト」は情報を提供する企業の信頼にもつながり、コンテンツマーケティングの観点からも非常に価値があります。
関連記事:今さら聞けない「インバウンドマーケティング」と「コンテンツマーケティング」の違いとは?
リスティング広告は、検索連動型広告といって「Google」や「Yahoo!」などの検索エンジンの検索結果画面に表示される広告です。オークションにより掲載順位が変わり、広告がクリックされると課金するモデルです。低予算から始めることができる点も魅力です。
何より、SEOと同様に「検索したキーワード」に連動して表示されるため、商品やサービスに関心を持っている見込み客へリーチすることが可能で、確度が高い層の集客が期待できます。
ビッグワードと呼ばれる多くの人が検索するキーワードはオークション競争も激しく、入札単価も高騰します。予算上限も設定できますが、自社商品名やロングテールキーワードなどもうまく活用した入札運用により費用対効果のコントロールは可能です。
SEOと同じくリスティング広告もコンテンツの品質評価が、掲載順位に反映されます。広告費がかかり、コンテンツのクオリティや運用も必要なリスティング広告ですが、SEOに比べて早く成果を期待できる点が大きな魅力です。
BtoBのリスティング広告の詳細はこちらの記事も参照ください。
関連記事:今こそBtoB企業がWeb広告に取り組むべき理由
ディスプレイ広告は、Webサイトやアプリの広告枠に表示される広告です。Yahoo!の検索画面の隅などに表示される広告や、ブログ記事などのページの途中に出てくるバナー広告やテキスト広告がディスプレイ広告です。
自分が少し前に閲覧したり検索した商品が表示された覚えがありませんか。ディスプレイ広告はユーザーの興味関心にあわせて関連する広告を表示するターゲティング機能が特長です。地域や年齢などのユーザー属性、検索や閲覧履歴の興味関心にあわせて広告を表示できるため、まだ悩みが顕在化していない潜在的な見込み客まで広くリーチできます。
SNSは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(Social Networking Service)の略で、世界中で使われているWebサービスです。ソーシャルメディアの利用者は増加をたどり、多くの企業が自社アカウントを運用しています。若い世代の利用が多いイメージもありますが、こちらのグラフをみると全世代で利用時間が長いことがわかります。
出典:総務省情報通信政策研究所/令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書
コミュニケーションツールとしてだけでなく、情報収集ツールとしても活用されているソーシャルメディアですが、ビジネスにおけるSNSの活用は「オーガニック運用」と「ソーシャル広告」に大別されます。それぞれの特徴と代表的なSNSを見ていきましょう。
オーガニック運用とは、一般的なSNSの使い方と同じように自社のアカウントで情報を発信していく運用方法です。
伝えたいことを自由に発信できますが、実際のところ商品やサービスを直接的にPRしてもほとんど関心を持たれません。契約に直結させることを目的とするより、自社や商品の〈プロモーションの場〉として活用するのが得策でしょう。「このアカウントは有益な情報が得られる」と印象づけることで自社や商品の信頼を育むのです。
SNSは発信の手軽さからユーザーの反応を得やすいのも特徴です。運用者ではなく、企業としての発言となりますから、ユーザーから反応や問い合わせがあった際の対応スキームを含め、自社アカウントの運用スタンスも整理しておきましょう。
ソーシャル広告とは、FacebookやX(旧Twitter)など各種のSNSプラットフォームに配信する広告のことです。
オーガニック運用はユーザーにフォローされるか、プラットフォームでの「おすすめ」に選ばれなければコンテンツを見てもらえません。ソーシャル広告はユーザーの属性や行動履歴でターゲットを設定し、そのタイムラインなどに広告を表示できます。いまやほとんどのSNSがソーシャル広告に対応しています。
各プラットフォームの特性をつかみ、自社の見込み客により認知されやすいものを選ぶといいでしょう。
出典:総務省情報通信政策研究所/令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書
Facebookは実名での利用を原則としており、ユーザーの名前や年齢、キャリアなどの個人情報が明確なSNSです。コア層は30-40代を中心に、仕事関係者とのつながりやビジネス目的で利用しているユーザーも多く、実名制という特徴からターゲティングの信憑性が高い点も魅力です。BtoBビジネスとも相性が良いSNSといえます。
最近「X(エックス)」に変更されて話題となったTwitterは、速報性と拡散性に優れたSNSです。140字以内の短文が基本で、今起きていることや興味があることについての素早い情報発信が可能であり、翻って速報性の高いSNSとして認知されています。気に入ったツイートを簡単な操作で共有(リツイート)できるため、何気なく書いた投稿が他者から他者へ爆発的に拡散される〈バズり〉が起こるのもX(旧Twitter)の特徴です。
自身の興味や職業の専門性を活かした情報発信や、ライフハックなどの情報シェアも豊富なため、GoogleやYahoo!のように情報収集のためにX(旧Twitter)で検索するユーザーも多くいます。
また、X Premium(旧Twitter Blueサブスクリプション)を購入したアカウントは、最大25,000文字の長文ツイートが投稿できます。企業の公式アカウントだけでなく、企業所属を明記した個人アカウントで自社のサービスやイベント参加への情報発信も行われています。
Instagramは写真や動画がメインのSNSです。ユーザーはビジュアルのインパクトに手を止めて閲覧しているので、ビジネス利用も美容や飲食、アパレルなどビジュアル訴求に強い業界の利用が目立ちます。
とはいえ、「モノ」を重視しているのではなく、シチュエーションやストーリーなど「コト消費・トキ消費」の価値観があるといえます。見方を変えれば、派手さやウィットに富んだコンテンツがなくても、映えやストーリー性をおさえたアプローチができれば思わぬファンを獲得できる可能性をもっています。
Facebookと連携している背景もありますが、体験をシェアするプラットフォームだからか、BtoB向けのイベント開催広告なども意外と多く出稿されています。
LINEは国内最大級の利用者を有するSNSです。ビジネス利用向けに「LINE公式アカウント」が用意されており、1対1で会話する個人LINEと違って、LINE公式アカウントは複数の登録者にメッセージを一斉配信することもできます。
BtoCでは大企業から個人経営者まで広く利用され、企業アカウントと友達になることで、イベント応募やスタンプ配布なども展開されていますね。
BtoBビジネスは、情報発信よりもチャットボットなどでの活用が多いかもしれません。リード獲得用途では、最初に自社アカウントをフォローしてもらう必要があるため、業界によって向き不向きがある印象です。
YouTubeは日本国内だけで利用者数7,000万人超を誇る動画共有プラットフォームです。
他のSNSサイトよりも比較的長時間視聴することも受け入れられているので、規模を問わず多くの企業が自社や商品紹介、関連テーマへのトレンド解説ツールとしても利用されています。
YouTubeにアップロードした動画をコーポレートサイト内に埋め込んだり、セミナーやウェビナーで流したりとオンライン上で多様な活用ができるのも特徴です。
自社で運営する媒体(オウンドメディア)で発信を続けることは大切ですが、自社Webサイトにたどり着いていない見込み客も大勢います。そうした見込み客をオウンドメディアへ誘導するきっかけとして利用したいのが、ペイドメディアやアーンドメディアなど外部が運営するメディアです。
まずは見込み客のペルソナを明らかにし、彼らがよく閲覧するメディアサイトやアーンドメディア(SNS、ブログなど)を絞り込みます。業界特化やサービス比較メディアなどもこれにあたります。それらのサイトに自社や商品についての記事を掲載してもらったり、広告枠や会員メルマガを使ってオウンドメディアへ誘導しましょう。
新商品やイベントの情報をプレスリリースとして各所に提供する手法は以前からありますが、Webメディアではプレスリリース専門のプラットフォームを利用するのが手軽です。
各種メディアがチェックする場所へ情報を提供しておくことで、話題に取り上げられる可能性が高まることは確かです。注目されやすい書き方の工夫が必要ですが、多くのメディアに露出する機会を増やしたい場合の有効策といえます。
ここまで主なWeb集客を紹介しました。では、Web広告やSNS、外部メディアなどで関心を引いた後の動線は想定できているでしょうか。
そもそも、どんなWebサイトを用意すれば「オンライン上にいる見込み客」を、自社サービスを検討してくれる「真の見込み客」へと導くことができるのでしょう。
Web集客の施策を始める際は、ただサイトへ誘導するだけでなく、そこから見込み客を育てる動線も設計しておくことが大切です。
BtoBにおけるWebサイトには、自社の基本情報を伝える「コーポレートサイト」、商品やサービスに関する情報をまとめた「サービスサイト」、求職者向けの情報をまとめた「採用サイト」、株主や投資家に向けた「IRサイト」などがあります。
すべてがコーポレートサイト内に入っている場合もあれば、例えばサービスの機能や見込み客に向けた情報発信は「サービスサイト」に切り出しているパターンもあります。
重要度や提供できるコンテンツによっても異なりますが、自社サイトのどこに見込み客を集めれば顧客獲得につながるか、またどんな情報がよく見られているかを分析しながら、サイト設計の戦略を練ることも重要です。
Web集客をする時も集客後も、重要なのはコンテンツの質です。
何の情報をどのような見せ方で発信すれば見込み客の関心を引けるのか。直接的な対話が生まれる前のオンライン上のコミュニケーションだからこそコンテンツがものを言います。
コンテンツ制作は手間がかかり、なかなか手をつけられないことも多いかもしれません。しかし、実は社員の知識など「自社で当たり前」と思っている情報が、まだ製品や関連するトレンドについて詳しく知らない見込み客には有益な情報である場合もあります。
必ずしも斬新なコンテンツでなくてもいいのです。見込み客の視点に立って、求める情報が分かりやすく伝わるか、その先のアクションへ進みたくなるか、ゴールを見据えながら取り組んでいきたいですね。
では具体的にどんなコンテンツがあるか、ご紹介します。
商品・サービスが属するジャンルにすでに関心を持っているユーザーの集客をねらうなら、彼らの課題を解決するようなお役立ち情報をコンテンツにしましょう。例えば顧客からよく聞かれる声や相談内容からトピックを考え、具体的な解決策を提示します。良質の情報はそれを発信する企業の信頼を高め、潜在ユーザーを準顕在ユーザーへと導きます。
Webの特性をいかして幅広い認知をねらう戦略もあります。まだ情報収集段階にいるユーザーが興味を持ちそうな検索ワードをピックアップし、それらと自社の商品・サービスを結びつけるトピックを発信しましょう。情報収集中のユーザーは様々な情報を求めています。コンテンツの内容は狭く深くより〈浅く、広く、分かりやすく〉を心がけ、継続的に数を発信し続けるのが効果的です。
体験に基づく一次情報は、信頼性の高い情報として好まれます。企業の場合は実績や事例がオリジナルな有益情報として評価されます。顧客から実際に寄せられた悩みの解決事例を紹介しましょう。自社の強みを具体的に伝えることができますし、比較検討中のユーザーにとっては重要な判断材料にもなります。