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リモートワークでうまくいく~働き方対談(前編)

作成者: タービン・インタラクティブ|2018年01月31日

最近、働き方に関する記事やコンテンツを日常的に目にするようになりました。しかし、その多くは資本や人材が豊富な大手企業の事例で、中小企業が参考にできるレベルで新しい働き方を実行に移している企業はまだ少ないのが現状です。そんな中、「納品のない受託開発」「社員は全員在宅勤務」という革新的なスタイルで注目を集めるソニックガーデンの倉貫社長にタービン宮古島オフィスに来ていただきました。
今回は、倉貫社長と代表の志水による働き方対談(前編)をお届けします。

お話を聞いた人:
倉貫 義人さん 株式会社ソニックガーデン 代表取締役

大学院を修了後、大手システム会社でエンジニアとしてキャリアを積みつつ「アジャイル開発」を日本に広げる活動を続ける。自ら立ち上げた社内ベンチャーを、2011年にMBOし、株式会社ソニックガーデンを創業。月額定額&成果契約という「納品のない受託開発」を展開し、注目を集める。新しいワークスタイルへの取り組みとしてリモートワークを実践し、そのノウハウも発信し続けている。
著書:
「納品」をなくせばうまくいく~ソフトウェア業界の“常識"を変えるビジネスモデル

リモートチームでうまくいく~マネジメントの〝常識〟を変える新しいワークスタイル

ようこそ、宮古島へ!

志水:
今回はリモートワーク教の教祖・倉貫さんによる宮古島聖地巡礼ということで(笑)、お会いできるのを楽しみにしていました。

倉貫:
こちらこそです。宮古島、いいところですね!オフィスも居心地いいし、また今度ぜひ会社の仲間を連れて合宿したいなと思ってます。

志水:
いいですね。名古屋スタッフを宮古島に滞在させてリモートワークを体験してもらっていますが、帰りたくないメンバー続出です。

倉貫:
よくわかります(笑)

今、子どもたちに知ってほしいこと

志水:
倉貫さんには先日、宮古島の下地中学校で彼らが大人になったときの働き方というテーマでお話いただきましたね。

倉貫:
はい、今はまだ特殊な業界での特別な働き方だと思われるリモートワークも、今後は当たり前になると思っています。ITの現場だけでなく、これから徐々に一般の会社のカルチャーや制度が整備されていくのは必至だと考えているのでそのあたりの話を子どもたちと共有しました。

志水:
僕は常々、ITは離島にとって最大のチャンスだと考えているんです。ぜひ宮古島の子どもたちにもそこのところを分かってもらいたいですね。

倉貫:
実は今回子どもたちに一番伝えたかったのは、 「働くのは楽しいんだよ」というメッセージなんです。だから生徒さんの感想文に「働くのって楽しいんですね!」と書いてあったのを見たときにはとても嬉しかったですね。

志水:
労働時間の問題などから「仕事=楽しい」というポジティブなニュースや記事が少なくなりましたよね。いやー今日も仕事楽しいよね!って言ってる人ってどこかおかしいと思われるんでしょうかね。いいと思うんですけど(笑)。

倉貫:
(笑)僕もそう思います。

場所が変われば、人間が変わる

志水:
今、順番に名古屋のスタッフに宮古島でリモートワークをさせているのは、「視野を拡大してほしい」というのが大きな理由です。多様な人と会ったり雄大な自然に触れたりすることで、目の前の仕事だけじゃなくもうひとつ大きい目線で物事を捉えることができるんじゃないか。それが新しいアイデアにつながるんじゃないかなと思っています。

倉貫:
クリエイティブな仕事には本来、様々な経験や体験が必要ですよね。
PCで仕事はできますが、PCに向き合うだけではやっぱりダメなんですよね。

志水:
デザイン(設計)という言葉の意味は、パーツのデザインから事業のデザインまで本来とても幅広いですよね。そこでは全体を見るために俯瞰したり逆に細部に注目したり、常に目線を変えなくてはいけない。どちらかに固定するのはまずいわけです。
そのための一つのアイデアは、人は場所を変えることで自然に目線が変わるということです。同じ人でも別の場所で会うとテンションや感じ方が違うということは、誰にでも経験があると思います。それは無意識に自分のレンズが変わってるから。レンズを変えれば心のインプットのしかたも変わっているんです。

実は自分自身も最初に宮古島に来たときにそれを体験して、そこが全てのスタートなんです。ちなみに宮古島移住者に聞くと、私たちのように行き詰ったら検索・・ではなく行き詰ったら海を見る、だそうです。カッコつけテルわけじゃなくてホントにやってる。それってすごいんじゃないかなと思ったのがきっかけなんです。

また今の時代は、会社から「宮古島に行ってきて」と言われても準備に3ヶ月かかるわけではありません。翌日に行って、すぐに前日までの仕事の続きを宮古島で出来る。そんなことが可能な時代に、そうしない理由がないな、と。

倉貫:
でもそれはタービンが会社としてやろうとしてるからこそ可能なことですよね。みんな南の島で働きたいとは思ってはいても、個人的な思いだけではなかなか難しい。会社として「行って来い」と後押ししてくれるから行ける。

志水:
確かに、宮古島への移住が夢ですという人は結構います。ただそこには当然ハードルがたくさんあり、かなりの覚悟が必要だったりします。でも、もっと気楽に可能性が試せるようにすることが会社の役目なんだと思っています。

そういう意味では倉貫さんの「会社」のように様々な地域のいろんな価値観を持った人がバーチャルに集まり、オンラインで会話をしながら課題に対して向き合い、一つのプロジェクトを行っていることに僕も勇気をもらえると思っています。

倉貫:
それは嬉しいです。

ソニックガーデンのユニークな取り組み

志水:
そもそもリモートワークの会社を創ろうという目的でソニックガーデンを始められたわけではないんですよね?

倉貫:
ええ。4、5年前は一人以外は全員東京のオフィスに普通に通う会社でした。そのうちに「在宅勤務で採用して欲しい」という応募が増えてきて、2.3年前には社員の半数以上が在宅勤務者になりました。このままではバランスがとれないということで、全員を在宅勤務にしたわけです。

志水:
皆さん戸惑ったんじゃないですか?

倉貫:
そうですね。最初は、「会社に来ないで」と言っても毎日来るし、自分も在宅勤務といいながら結局毎日行ってました。だけどある時思い切って、社長である自分が率先して会社に行かなくなったんです。そうしたら、だんだんみんなが来なくなった。やっぱりリーダーが率先して行動を起こすことが、会社を変えていきたい時には必要なんだろうと思いましたね。

志水:
なるほど 、リモートワーカーが社内でマイノリティーから多数派になったときにそちらをベースにしたルールや雰囲気に作り直したわけですね。

倉貫:
そうです。また、自分が会社に行かなくなって初めてリモートワークの不便さがわかりました。在宅側から「~してほしい」は言いづらいんですね。だから社長の自分が率先して会社の情報はすべて電子化したり、雑談を社内でするためのツール作ったり。やはり相手の気持ちに立つのは体験しないと難しい、と感じました。

志水:
オンラインだと逆にコミュニケーションスキルが上がりますよね。リモートワークをすることによって新しく獲得する能力やスキルがあるように思います。

倉貫:
そうそう、むしろコミュニケーションはリモートのほうが促進されるような気がします。いないからこそ、ちゃんと伝えようとしますよね。

志水:
オフィスにいるとなんとなく分かったような気がしているんだけど、全然分かってないという。

倉貫:
あと、会議に出てるけど終始発言しないで聞いてるだけの人っているじゃないですか。そういう人って「黙ってないで発言しろよ」と思ってすごく気になりますよね。あとその間、他に仕事できないから余計にもったいない。だから、仕事しながら聞いてるだけで会議に参加することを僕らの会社では「ラジオ参加」と言ってます。耳だけの参加でも、なんとなく他のチームが考えてることが分かるとか、経営陣の意向が分かったりとメリットが大きいんです。

志水:
リモートって要件を伝えるだけになりがちで、空気や雰囲気が伝わらない。でも実は物事が決まっているプロセスや言葉にならない空気感が重要だったりするわけで、そこに参加してもらうということですよね。そういうのをやっていくと人間の能力がもっと拡張されるような気さえしますよね。ちなみに倉貫さん、ラジオ好きですよね。「社長ラジオ」もあるとか。

倉貫:
そうですね。みんなを一箇所に集めて話しをするよりも、社長ラジオはぼくが話した言葉を録音して、それをいつでもどこでも聞いて欲しいという発想で始めました。そうしたら嬉しいことにみんな聞いてくれているんですよ。子供の送り迎えやウォーキング中とか、自分の好きなタイミングで聞けるのが良いみたいです。

志水:
音声は「ながら」ができるのでまだまだ可能性がありますよね。

以下、後編へ続きます→