第32回:PDCAが回らないわけ

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2010年1月14日

「PDCAを回して、成果につなげましょう。」

Webマスターや宣伝・広報セクションの方であれば、耳にタコかもしれません。Plan(計画)Do(実行)Check(評価)Action(改善)のサイクルを循環させることで、螺旋状に継続的な業務改善をする。データを基に現状を評価・改善しやすい「Webサイト運営業務」と親和性が高いこともあり、企業Web戦略の基本と考えられるようになっています。

しかしながら「当社のWeb運営ではPDCAサイクルが上手く回っています。」と胸を張るご担当者には、なかなかお会いできません。実際には、ほとんどの企業が、悩みながらも成り行きまかせの運用をしているのです。
理由としては、
1.なにを効果指標として追跡すればよいのかわからない。
2.解析されたデータが何を意味するのかわからない。
3.対策に関するアイディアが出ない。
といった技術的な問題、
A.構築期に比べ、運用期には十分な時間が確保できない。
B.運用期に必要な更新・変更予算が確保できない。
といった社内事情が複合していることが多いようです。

話が少々それますが、私は最近、スポーツクラブで「パーソナルトレーナー」にサポートをしてもらっています。自分の専属トレーナーとトレーニングメニューの実行や食行動の管理などを共有しながら、ダイエットと体づくりという課題解決を目指すのですが、思った以上に効果が高いことに驚いています。

単調なトレーニングと食事制限。自分ひとりでは方法に確信も持てず、きっと続かなかったでしょう。しかし、誰かがぴったり横についてペースメーカーとなり、先を照らしてくれていたらどうでしょう?辛さを乗り越え成功を分かち合いたい気持ちと安心感で、今なお新鮮なモチベーションが保たれています。

さて、Web担当者の業務に話を戻しましょう。Web解析により評価をし、改善アイディアを出し実作業を進めるためのスキルは、マーケティングやデザイン、ユーザビリティや行動分析など多岐に渡り、一人の担当者が全てをこなせるわけではありません。必要なスキルを持ったスタッフを集め、企業の戦略として意識を共有・統一するのも大変な作業。重要でありながら自分ひとりではなかなかやり通すことができないものです。

そんな時に活用したいのが、Web業界のプロフェッショナル。彼らを制作・更新業者としてではなく、「課題を共有し、成功を分かち合うパーソナルトレーナー」として考えてみてはいかがでしょう。多彩な業務をパワフルにサポートできる「専属トレーナー」を見つけ、ペースメーカーを依頼できれば、社内のPDCAサイクル構築に大きく貢献してくれるはずです。

(2010/01/13 中部経済新聞掲載)

第31回:無料モデルのインパクト

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2010年1月7日

あけましておめでとうございます。

いよいよ2010年、デフレの影響を感じずにはいられない年始だったのではないでしょうか?百貨店の初売りでは、実用品を詰め込んだ「お買い得福袋」が人気を集めたそうです。最近では安い値札を見ると不安になってしまう私のようなタイプには、初売りのバーゲンも素直に楽しむことができないようです。

そんな中、文具売り場で気付いたことがあります。3年、5年が比較できるような、大型の日記帳が減っているような気がするのです。「そうか、非公開のブログを書いていれば、日記帳を買わなくてもいいからかな。」数千円を出して日記帳を買うことに比べ、ブログは無料で利用できます。

データはいくらでも登録できますから、2年前や3年前と比べるのも簡単。日記ユーザーがブログ利用に移行したとしても不思議ではありません。実際には在庫が少なかっただけかもしれませんが、私はそんなユーザー像を思い浮かべてしまいました。

確かにブログサービスは「無料」。インターネットでは、他にも無料をベースにしたビジネスモデルが多いものです。グーグルも無料、ユーチューブも無料、ツイッターもフリッカーも無料で公開されています。

では、どうしてWebサービスはこれほど無料にできるのでしょう?その答えは圧倒的なコスト低減です。
1.サーバコンピュータの処理能力
2.ハードディスクの記憶容量
3.ネット通信インフラの速度
このWebサービスの根幹をなす3つの要素は、毎年劇的にレベルが上がり、同事にコストが下がっています。

結果、「商品や作品を並べる陳列棚」や「顧客データを格納するための本棚」は、「ほぼ無料で」「無限に」利用できるようになりました。「一部の顧客から一定の費用を回収する仕組みのために、他の圧倒的多数には極めて低コストで無料サービスを続けられる。」この前提が、成功しているWebサービスには共通しているように思います。

さあ、みなさんの企業には、ネットを活用して無料でサービスできることは無いでしょうか?それは、競合企業がすでに展開していたり、準備していませんか?

無料のモデルを利用することで顧客は変化し、無料モデルをベースにビジネスは変化してきました。「これまでの業界の既成概念から脱却し、新しいビジネスモデルを構築する。」2010年には、そんな勇気と決断が求められているのだと思います。

(2010/01/06 中部経済新聞掲載)

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