「リードにナーチャリング施策を実施する」といわれても、どのリードに何をすればよいのか悩んでいる、もしくは悩んだ経験のある人は多いと思います。知識レベルや興味・関心の異なるリードに一律的な施策を実施しても、効果は少ないことでしょう。
そこで今回は、リードを細分化した概念として、「TOFU(トーフ)」、「MOFU(モーフ)」、「BOFU(ボーフ)」についてご紹介します。このTOFU/MOFU/BOFUを頭に入れておくと、社内で施策を検討する際にミスコミュニケーションが減り、より効果的な手を打ちやすくなるのです。
TOFU/MOFU/BOFUとは、それぞれ「Top Of FUnnel(トップオブファネル)」「Middle Of FUnnel(ミドルオブファネル)」「Bottom Of FUnnel(ボトムオブファネル)」の頭文字をとった略語です。
ファネルとは、日本語の「ろうと(漏斗)」のことで、液体を流し込むのに使用する、円錐の下に管がついているような形の容器です。別名「じょうご」とも言い、化学の実験のときに使ったりしますので覚えていらっしゃる方も多いと思います。
マーケティング用語としての「ファネル」は、リードを集客して成約へつなげるまでの一連のプロセスを指しています。上からリードを流し込み、徐々に狭くなり(=リードが選別され)、管で下部へ流れていく(成約へつなげる)……こうしたインバウンドマーケティングプロセスを分かりやすく視覚化してファネルに例えているわけです。
実際のファネルはなめらかな円錐形をしているのですが、インバウンドマーケティングのプロセスは段階的に進められます。
リードから成約へつなげる「デマンドジェネレーション(需要創出)」のプロセスは、「リードジェネレーション(集客)」「リードナーチャリング(育成)」「リードクオリフィケーション(選別)」と主に三つの段階に分けられます。
TOFU/MOFU/BOFUは、それぞれ「ファネル」の最初、中間、底辺ということになりますので、リードジェネレーション段階に当たるのがTOFU、リードナーチャリング段階に当たるのがMOFU、リードクオリフィケーション段階に当たるのがBOFUといういうわけです。
ファネルが下に行くにつれて徐々に狭くなっていくのと同じように、TOFU→MOFU→BOFUと進むにつれてリードの数は少なくなり、リードの知識レベルや興味・関心は高まります。ファネルを三段階に分けることで、段階ごとに必要なマーケティング施策が異なることを示しているわけです。
インバウンドマーケティングの戦略を考えるうえで、なぜリードの概念を分ける必要があるのでしょうか。
リードを三段階に分けるのは、あまりにリード概念が広すぎるためです。さらに言えば、マーケティングのやり方自体が、リードの知識・興味に基づいて細分化されていることが背景にあると言えるでしょう。
もともと、リードという言葉もカスタマー(顧客)とは異なる段階があることを示すために作られたものです。かつてのマーケティングといえば、ラジオやテレビ、新聞などといったマスメディアに大量に広告を流し込み、消費者を購買へ引っ張り込むやり方が主流でした。しかし消費社会が成熟したことで、消費者も賢明になりました。強引な広告宣伝では、物を買わなくなってしまったわけです。
そこで提唱されたのが、消費者の購買プロセスを表す「AIDMA」です。消費者がAttention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(購買行動)の流れで購買行動を起こすと提唱されるようになったことで、マーケティングのやり方も消費者の購買プロセスに沿うようになりました。
購買前の消費者心理を理解する重要さを示す概念の一つとして、「リード(見込み客)」という言葉も生まれました。
リードとは、購買行動に至る前の段階にある顧客を指しています。そうだとすると、AIDMAモデルにおいて「AIDM」段階にあればすべて「リード」と呼ばれますよね。これでは、「リード」という言葉を使っても意味内容が広すぎて、誤解が生じる可能性があるわけです。
そこで、リードをさらに細分化させ、ファネルの段階に応じたTOFU/MOFU/BOFUという言葉が生み出されました。知識や興味レベルの低いリードと、購買直前の段階にあるリードでは、取るべきマーケティング戦略も大きく異なります。
リードをさらに三段階に分けることで、より顧客にとってメリットの大きい、企業にとっては効率的なコミュニケーションを図れるようになるのです。
ファネルの段階ごとに、なすべきマーケティング施策は異なります。リードの数も、知識や興味のレベルも全く異なるためです。
ファネルの段階とマーケティング・営業施策がずれていると、全く売り上げにはつながりません。たとえば、ショッピングモールでただ何となくアパレルショップに入ったというシチュエーションを思い浮かべてみてください。
そのショップに入ったのは、何となく「最近服を買っていないな」「ちょっと時間ができたから寄ってみるか」という軽い思いから。それなのに、いきなり店員が近づいてきて、次から次へと細かく商品説明をし出したらどのように感じるでしょうか。
「そこまで買いたいと思っているわけではないのに……」と、うっとうしく感じることでしょう。
インバウンドマーケティングでも同じことが起こりがちです。知識もなければ興味の度合も低いTOFUに対しては、仕様や金額などの細かい説明をしても仕方がありません。
興味を引くためのブログ(オウンドメディア)からCTAへ遷移してもらい、まずはメルマガ登録や資料ダウンロードなどを活用することで、メールアドレスなどの情報を取得します。
そこから、そのリードにとっての課題の提示、解決策の提示、商品紹介などを経て知識や興味を高めていくわけです。MOFUであれば、メルマガ配信で知識を蓄えてもらい、セミナー参加を促すかたちで関心を高めていきます。
BOFUであれば、営業担当者に引き渡したり電話をかけたりと、より直接的な手を打つことが一般的です。
なお、どの段階のリードをTOFU(あるいはMOFU・BOFU)と呼ぶのかについては、一律的なルールがあるわけではありません。
KPIや会社事情に応じて、会社ごとに定義していくことになります。忘れてはいけないのが、それぞれの段階でどのような施策を打ち出すのか、という戦略部分です。TOFU/MOFU/BOFUと呼び分けるのは、何よりそれぞれに適したマーケティング施策を行うという実践的・戦略的理由からなのです。
マーケティング施策を考えるうえでは、営業部隊との連携を念頭に置く必要があります。TOFU/MOFU/BOFUの先には、営業によるフォローのプロセスが必要不可欠だからです。営業との連携のないインバウンドマーケティングは、砂上の楼閣に過ぎません。
どの段階までリードの興味・知識が高まったら営業に引き渡すのか、あらかじめ営業部隊と認識をすり合わせます。BOFUで引き渡すことがほとんどなのですが、何を持ってBOFUとみなすのかを考える必要があります。セミナーに参加したら営業に引き渡すのか、問い合わせがあったらなのかなど、考えられるケースは多岐にわたると思います。
マーケティングオートメーション(MA)のプラットフォームを使用している場合、「スコアリング」という機能によって引き渡し基準の設定をサポートしてくれます。「セミナーに参加:30点」「メールを開封した:5点」など、リードの行動をそれぞれスコアリング(点数化)して、一定程度の点数になったら自動的に営業担当者にメール通知が飛ぶような設定が可能です。
MAを使用している場合も使用していない場合も、営業へ引き渡す基準と、その際に引き渡すべきリードの情報を確認しておきましょう。これは、企業の事情によって大きく判断が異なってくる部分です。
たとえば、インサイドセールス部隊が充実している企業であれば、BOFUに移動した段階でリードの抱える課題と関心をある程度把握し、リードに電話をかけてBANT情報を取得し営業部隊に引き渡す戦略がよいかもしれません。
また、営業部隊が少なければ、リソースを最大限活用するためにも購買直前の段階でしか引き渡すことはできないでしょう。
インバウンドマーケティング導入のためのステップはこちらの記事でも詳しく紹介しております。合わせてご覧ください。
インバウンドマーケティング成功の4ステップ~見込み客を集めて顧客に育てる