BtoBマーケティングは時代の大きな変化と共に、従来よりも難易度を高めています。もはや確信を持った対策を伴わない実績向上は、見込めない時代といっても過言ではありません。
今回の記事では、BtoBマーケティングが注目を集める背景を紐解いた上で、BtoBマーケティングが難しいといわれる理由を「戦略面の4つの理由」と「戦術面の3つの理由」に分けてご紹介し、併せて効果的な対策も共有します。
BtoBマーケティングに難しさを感じながらも、真摯に取り組んでいる企業担当者のみなさんの参考になれば幸いです。
■本記事の目次
BtoBマーケティングが注目を集める背景まず、BtoBとは「Business to Business」の略称で、法人向けのビジネスモデルを指します。一般的に製造業や企業向けサービスを提供する企業を広く表現しています。
このBtoB企業のビジネスモデルを取り巻く外部環境は、この数年で大きく変化し、その概念も絶えず変化しています。
現在において「BtoBマーケティング」とは、展示会やダイレクトメールなどのオフラインを活用した施策から、インターネットやアプリケーション、営業支援ツールなどを活用したデジタルな集客・顧客管理・顧客育成などの手法を含むマーケティング活動全般を意味します。
そのBtoBマーケティングは現在、法人営業に携わる企業関係者から大きな注目を集めています。その背景には、以下の3つの側面があります。
■BtoBマーケティングが注目を集める背景
それぞれの意味するものを、確認しておきましょう。
購買決定側の多くの企業、つまりBtoB企業にとっての潜在顧客は、今日ではサービス購入時に周到に情報収集を行う傾向が強まっています。
インターネットの普及で、実に89%のユーザーが購入前にWebサイト上で検索・検討し、検討プロセスの57%は営業担当者と会う前に顧客側で完了しているというデータがあります。
ひと昔前とは異なり、インターネットの普及で情報収集も容易になりました。自社で購入を検討している商品やサービスの詳細情報、口コミ情報を事前にチェックする度合いが年々高まっています。
2020年前半から吹き荒れた新型コロナ感染症拡大の影響により、多くの企業の営業活動において対面営業が困難になりました。かつてのような訪問営業主体の体制から、オンラインによる営業活動に多くの企業がシフトしました。
この営業のオンライン化は、多くのBtoB企業に時間や場所の制約をなくすプラスの面をもたらす一方で、営業活動においては、営業対象である見込み顧客における在宅ワークが増加し、商談化までのハードルが高くなったり、オンラインツールの導入コストや非対面によって、交渉力や説得力が多少パワーダウンするなどのデメリットがあります。
そのため、BtoB企業の営業担当者はこれまでの営業スタイルでは成果を上げることが難しくなり、必然的にオンラインでのセールスの導線を検討することが重要になってきました。
今日では経済社会の情報化が進んであらゆる市場が成熟し、サービスの平均化が進みました。かつてのような粗悪品は影を潜め、価格も品質も企業間での差が縮まっています。
そんな状況下で、差別化は商材の本体以外のサービスや付加価値に頼らざるをえない場合があります。そのため、ひとつのブランドにこだわる必要性が薄れ、顧客によるサービス乗り換えの判断も容易になりました。
そのこと自体は、新規参入のハードルが下がるというチャンスを生む一方、獲得した顧客がすぐに流出しかねない囲い込みの難しさをもたらします。
つまり、サービス乗り換えの容易性は「諸刃の剣」といえるでしょう。BtoB企業にとっては、顧客との関係性を深めることやそれを持続することが重要課題となっています。
上記のような背景から、デジタル手法も駆使するBtoBマーケティングの重要度が高まっています。しかしそのBtoBマーケティングは「難しい」といわれることが多いのも事実です。
BtoBマーケティングがどのように難しいのかは7つの理由に集約できますが、それらは戦術面と戦略面に分けることができます。マーケティング手法をより深く理解するためには、戦術と戦略のスタンスの違いを理解しておく必要があります。
戦術と戦略は混同されることもありますが、比べると以下のような違いがあります。
戦略:大局的な戦い方の方針とその作戦
戦術:現場での作戦遂行の具体的な方法
戦略:さらに顧客層を広げることを目標に、シニア層を取り込むため、中高年のアンチエイジング需要に見合う要素をジムのコンセプトに加える
戦術:中高年のアンチエイジング需要を集客するため、フライヤーをポスティングしたり、体験モニター募集のポスターを近隣に設置したりする現場の活動
では、ここからはBtoBマーケティングが難しい理由を戦略面と戦術面から見ていきましょう。
まずは、BtoBマーケティングが難しい「戦略面」での理由は以下の4つです。
■BtoBマーケティングが難しい戦略面の4つの理由
個別に詳しく見ていきましょう。
BtoBマーケティングにおいて、まだ取引が始まっていない相手を「リード(見込み顧客)」(以下リード)などと呼びます。
BtoBマーケティングの多くの分野が、市場の成熟とともにレッドオーシャン化しています。すなわち、そうそう簡単にリードを獲得できないのが現状です。
リード側もしっかりと情報を収集して比較検討しているので、差別化ができていなければ多くの競合の中に埋没してしまいがちです。
リードの獲得に関する対策として、従来のやり方だけに固執せず、インバウンドマーケティングを取り入れることでリードの獲得数を上げていくことが可能です。
インバウンドマーケティングのインバウンドは、「向こうから入ってくる」ことを意味します。海外からの訪問客をそう呼ぶのと同じです。
ネット上の顧客接点を駆使してリードのほうから自社を見つけてもらい、リードが抱える課題に対し有益な情報を提供し、顧客化を図るマーケティング手法です。
インバウンドマーケティングに関しては、以下のページでわかりやすく説明しています。そちらもぜひ参考にしてください。
インバウンドマーケティング支援|BtoBマーケティング&Webサイト制作に強いタービン・インタラクティブ
せっかく獲得したリードもなかなか商談が進まずに、成約に導けないまま離脱させてしまうことが珍しくありません。
リードを確実に成約の方向に後押ししていくような戦略になっていない場合、個別のアプローチの精度を上げてもあまり意味がありません。もっと本質的な部分からの立て直しが必要です。
獲得したリードの商談がなかなか進まない場合の対策としては、MA(マーケティングオートメーション)のツールを戦略的に有効活用することが効果的です。
MAツールでリードの管理やリードスコアリング、リードナーチャリング、リードクオリフィケーションなどの施策を通じて、リードとの良好な関係を保ち、顧客となるよう育成し、成約確度の高いリードに絞り込んだ営業を行う手法です。詳しくは以下のページを参考にしてください。
マーケティングオートメーション(MA)導入サービス | BtoBマーケティングならタービン・インタラクティブ
商談が獲得できたとしても、成約にならない場合も多くあるでしょう。営業プロセスやトークスクリプト、それ以前の抽出案件の基準が甘いことなど、営業組織の改善も重要です。
受失注分析を行うことで、理由を突き詰めることで、原因を探りましょう。常に営業プロセスを見直し、失注する理由を潰すことで成果は変わります。
BtoBビジネスの世界はさまざまな企業が存在し、まさに玉石混交の様相を呈しています。大手でなければ、ともすれば存在が飲み込まれてしまいがちです。
そういう環境の下では、BtoB企業が認知度を上げていくのは非常に難しい課題です。そして認知が低ければ、さまざまなマーケティング施策も効果が出にくいのは否めません。
認知度向上のための対策としては、コンテンツマーケティングの導入・活用によって、業界の中で専門性の高い情報を積極的に発信することでブランディングを図り、認知度の向上を目指すことができます。
コンテンツマーケティングとは、信頼できる有益な情報を発信してファン層を増やし、成約を先に見据えた中長期的な視点でのマーケティング手法です。
コンテンツマーケティングに関しては以下の記事で触れています。
今さら聞けない「インバウンドマーケティング」と「コンテンツマーケティング」の違いとは?
企業の分野や扱う領域、業種などが現在は非常に多様化し、加えて多くの企業の経営方針が多角化しています。ひとつの看板で10も20も取扱業務を標榜している企業などが、決して珍しくありません。
また、BtoB企業では、購買担当者、ツール選定者、意思決定者にまたがって購買を決定するため、一見複雑に思えます。
BtoB企業のマーケティング担当者にとって、ターゲットとすべき顧客属性を絞り込むのは非常に難しく、労力のかかるものです。
ターゲットととなるペルソナを絞り込む際に行うことは2つあります。
①既存顧客の共通項を見つけて掘り下げる
②人間味のあるペルソナを想像する
今日では選ぶ基準となる物差しを持たないままでターゲットを探しても、自社商材に親和性が高いリードに出会うのは難しいです。
そのため、一旦視線を内側に向けましょう。ここでの内側とは自社内ではなく、自社がすでに顧客として囲い込んでいる既存顧客を指しています。
個々の企業の独自性はあるにしても、自社商材のロイヤルティを持つ企業群なので、同じような傾向性を持っていると考えられます。全体を見ていけば、そこに何かしらの共通項が感じられるのではないでしょうか。
共通項が見えてきたら、そこから逆算して自社の優位性をあらためて認識することが可能となります。「我が社は〜〜〜系の企業に強いのか」「我が社のサービスは〜〜〜をメインで扱う企業に喜ばれているのだな」と。
それらの共通項を定義づけして、自社のターゲット像が持つ属性とします。その上で潜在顧客群を想像し、ペルソナを描くことができれば理想的です。
既存サービスの新規市場開拓を行う場合や、新たなサービスを開始する場合でも、市場環境から理想的なペルソナを想定します。
また、ペルソナ策定時の注意点としては、実際にいる「人」を想像しながら作成することがポイントです。
ペルソナは、我々が生きる現実の世界と何ら変わりない「普通」の世界に生きています。「働く意義」や購買担当者として「商品を選ぶ基準」にも感情的な部分があるはずです。
想定したペルソナをチームで共有することは必須です。
実際にチームで動く際に「どんなペルソナが、どんな状況で、何を欲しがっているのか」の基準や温度感の共有はとても重要です。
ペルソナの作成に関しては以下のページを参照してください。
【サンプル有】ペルソナとは?インバウンドマーケティングの視点から解説
つぎに、BtoBマーケティングが難しい「戦術面」での理由は以下の3つです。
■BtoBマーケティングが難しい戦術面の3つの理由
それぞれの理由を、詳しく見ていきましょう。
BtoB企業において、リードを獲得するための施策として、オフラインでは展示会への参加やダイレクトメールの送付、オンラインではWebサイトでの情報発信やダウンロード資料作成といった業務が増え、リソース不足で施策が止まってしまう企業が多く見られます。
BtoBマーケティングの概念を取り入れたは良いものの、営業部門や技術部門、事業部などの他部門と協力しながらコンテンツを作成しなければならないため、想定より工数がかかるという声も多くいただきます。
リソースの問題は単純に業務量が多いため、起こりがちな現象です。可能であれば、専任担当担当を用意するのがベストです。
ですが、中長期的なプロジェクトで成果が見えないからと、専任担当が用意できない企業も多いでしょう。その場合は、戦略策定~施策の実施までフォローしてくれるパートナーを用意すべきです。
弊社でも戦略の策定~施策の実施までフォローできる体制を整えています。(コンテンツの作成のみ、戦略の相談のみ、でも大歓迎です。)
BtoBサイトに強い会社による、BtoB専門のWebコンサルティングサービス
リード(見込み客)とやり取りする中で、一歩進んでリードがサービス検討に入った段階で大切なことは、リードの「ニーズ」を見極めることです。ヒアリングによってニーズが見極められれば、それを満たす提案で、営業プロセスをさらに進められるからです。
しかし、多くの場合ヒアリングで表面上に出てくるのは「ウォンツ」です。これをニーズだと解釈してしまうケースが少なくありません。しかしニーズはもっと奥にあって、ニーズに突き動かされてウォンツが表面に出てきます。
ウォンツは「手段」、ニーズは「目的」の関係です。
ここでもBtoB企業の特徴である、購買プロセスに複数人の担当者がいることが、ニーズを掴みづらい要因になっています。
対策として、ヒアリングでリード側に「なぜ?」「誰が?」「何のため?」などの本質に迫るための質問を複数回繰り返しましょう。
おおむね3回以上繰り返せば、ウォンツの奥にある、リード側の窓口担当者さえ気づいていないかもしれないニーズを見極められる確率が高いです。
最初に出てきたウォンツに対して、先方が不快感を与えないよう配慮しながら「なぜそうしたいのでしょう?」「どなたが望んでいるのでしょう?」などと、話の流れに応じて臨機応変に質問を繰り返しましょう。
とある企業の例に置き換えて見てみましょう。
「社長、御社はどうして業務効率化システム導入を検討し始めたのでしょうか?」
「それは製造部門を効率化し、余剰人員を販売部門に回すためです」
「では、販売部門の人員を増やす発想のきっかけは?」
「営業力アップの必要性を感じたことです」
「営業力アップの必要を感じさせた原因は何でしょう?」
「シェアが減ってきているので、奪還したいのだよ」
ここでは「製造部門の効率化」はニーズではなくウォンツで、「シェア奪還」こそニーズです。
この例では質問を繰り返さなければ、「製造部門の効率化」をニーズと捉えてしまいがちです。それでは業務効率化システムを提案するにとどまります。それでは、競合他社の営業アプローチとの差別化も難しく、成約するかどうかもわかりません。
しかし質問を繰り返して「シェア奪還」というニーズを知ることができたので、業務効率化システムと営業力を強化する営業支援システムを抱き合わせで、先方にも良い条件でダブル提案する発想ができます。
ぜひ質問を上手に繰り返してウォンツの奥のニーズを見極めましょう。
商談が時間をかけて順調に進み、窓口担当者は納得していても、社内稟議が通らず成約できないケースがよくあります。BtoB企業の営業担当者としては最も避けたい、残念な結末といえるでしょう。
順調に商談が進んだにもかかわらず、社内稟議が通らない場合はBANT条件をクリアできていないことが多いです。
BANT条件とは以下の4つの取引条件の頭文字をとったもので、BtoB営業において商談の最初の段階で確認しておくべき項目といわれています。
BANT条件4つを把握した上での提案になっていない場合、どれかで引っ掛かって稟議が通らなくなることはありがちです。対策としては商談の初期に、BANT条件をすべて確認しておくことです。これをBANTヒアリングと呼びます。
商談の早い段階でBANT条件を把握し、それに即して当初想定していた提案を、そのままでよいのか見直しましょう。ボトルネックとなりそうな部分があれば、条件が合うようにアレンジしておくことで活路が開けます。
以上の、BtoBマーケティングが難しい戦術面の3つの理由は、それぞれで対策としてご紹介したテクニックによって打破できる可能性が高いので、ぜひ試してください。
一般的に、難しいといわれるBtoBマーケティングにも、それぞれの難しさに対して打つ手があることをご紹介しました。もちろん、それらがすべて解決につながるかどうかは、個別の状況もあるので一概にはいえません。
それでも、課題に対してアクションを起こすことによって、解決への流れが生じるのは間違いありません。その流れを積極的に大きくすることで、BtoBマーケティングの難しさを乗り越えて、良好なパフォーマンスにつなげていただくことを私たちは願っています。
BtoBマーケティングの展開の仕方に悩んだり、MA(マーケティングオートメーション)導入を検討されている担当者のみなさんは、どんな些細なことでも私たちタービン・インタラクティブにご相談ください。
経営状況に見合うマーケティング戦略を、真摯にご提案させていただきます。