第19回:Web担当者に必要な資質

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年10月15日

Webサイトのプロデューサーに必要とされるスキルとしてよく挙げられるものに
・マーケティング能力
・ブランドマネジメント能力
・システムやデータベースに関する知見
・プロジェクトマネジメントの経験
・クリエイティブセンス
・情報設計力
・コスト管理能力
・部門を越えた交渉力や発言力
といったものがあります。

これは、とりもなおさず企業のWeb担当者にも求められる能力ですが、実際に上記の条件を備える人材はいるのでしょうか。

15年以上企業Webサイトのお手伝いをしていると、数百人のWeb担当者さまとお付き合いをさせていただくことになりますが、そんなスーパーマンと出会うことは滅多にないものです。もし心当たりのある方、弊社プロデューサーとしてスカウトしますのでご紹介を・・・という冗談はさておき、Web担当者に求められる技能範囲やレベルが高いのは事実。

しかし、実際には「若い人が向いている」とか「パソコンが好きそうだ」という理由で実際の資質と異なる人員が登用されていることが多いように思います。

「社内に前例が少なく、新規の技術や方法論が多い中で、的確な情報収集を行い、最適な仮説を立てた上で、その検証をしながら、企業としての判断を繰り返す。」のがWeb担当者の仕事。特に難しいのは、コミュニケーションや調整能力です。

実際のWeb構築・運用プロジェクトは、広報IR担当、宣伝担当、サポート担当、開発担当、営業担当、システム担当など、様々な領域のメンバーが参加する横断的なものとして設定されるのが通例です。

しかしながら、参加メンバーは通常業務でWebを扱っているわけではなく、もちろんWebリテラシーが高いわけでもありません。

各メンバーの理解を進めながら目的を設定し、プロジェクトを成功に導くためには自信のWebリテラシーだけでなく、部署横断プロジェクトにおける情報提供者や合意形成者としての役割、コスト配分も含めたプロジェクトマネージャーとしての役割が求められることになります。ネットへの興味や、プログラムの能力とは別のビジネススキルが重要になるのです。

社内に足りないリソースは外部のWebコンサルティングや制作会社など、専門家の知見や技術を効果的に取り入れることで担当者のスキルをアップし、「企業内にWeb活用のノウハウを蓄積」することが重要です。

(2009/10/14 中部経済新聞掲載)

第18回:ソーシャルな欲求引き出し

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年10月8日

前回は、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)とソーシャルアプリのパートナーシップについてお話しました。

SNS側は、「ユーザーデータの取り扱い」をプラットフォームとして提供。アプリ開発事業者はSNS上で楽しめるアプリをビジネスとして展開。結果的にSNSの利用者・利用率拡大につながり、アプリユーザーも拡がるというストーリーです。

そのためには、ユーザーをリピートさせるビジネスとしての「常習性」「口コミ性」「換金性」が重要だとお話しました。Facebookで世界的に大ヒット中の農場運営ゲーム「FarmVille」を題材に、ご説明いたしましょう。

SNSの中で動作する、ソーシャルアプリの基本機能は、
・「自分」や「友達」の情報を取得して、ゲーム上に表示する
・アプリ上でプレイした内容情報を保存する
・保存された内容を、「友達」に通知する
・SNSの各種アプリケーション(メールやユーザー検索など)にデータを渡す
といった単純なものですが、これらを組み合わせることによって、実に巧みに「ハマル仕組み」を構築できるのです。

1.ゲーム自体の新規性や独自性より、「友人との体験共有」に重点がある。
・友人同士の畑を行き来して自慢したり、ほめたりできる。
・友人とギフトを交換すると、自分で買うよりずっと楽。(助け合い)

2.定期的に訪問してもらうための、「わかりやすい理由」がある。
・定期的に収穫しないと、枯れてしまう。
・日に一回、友人にプレゼントができる。

3.ゲームに参加していない友人を巻き込める「勧誘・口コミツール」がある。
・新しい友人をゲームに参加させるとレベルアップが早い。
・SNS内にレベルアップなどの記録が表示される。(友人がクリックするとボーナスがシェアされる)

4.収益モデルとして、仮想通貨の直接販売とアフィリエイトを共用。
・ゲーム内の仮想通貨の価値を上げた上で、直接販売する。
・会員登録やアンケートの記入などにより仮想通貨を支払う「アフィリエイト」。

重要なのは「友人関係」というエネルギーを源泉に、「互いに楽しんでもらう」媒介システムに徹していることでしょう。お互いのちょっとした努力を認め合い、センスや資金力を自慢しあい、互いに協力しあって向上していく。

人間が根源的に持っている「ソーシャルな」欲求を巧く引き出すことは、これからのネットプロモーションでも重要な課題となるに違いありません。

(2009/10/07 中部経済新聞掲載)

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