第09回:ターゲティング技術

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年8月6日

アドネットワークは、インターネット上の「小さなメディア」を束ね、広告メディアとしての力を大きくすると同時に、より目的にあった運用をするためのシステム。

前回は、「様々な銘柄の債権をポートフォリオで運用するファンドのような感覚」とご説明しました。ちなみに、広範囲な領域のメディアを束ねるアドネットワークを水平型(ホリゾンタル)アドネットワーク、特定の分野に特化したメディアを束ねるアドネットワークを垂直型(バーチカル)アドネットワークと呼びます。

私は昨 年11月、ニューヨークで開催された広告テクノロジーのカンファレンス「ad:tech」に参加してきたのですが、様々なアドネットワークがひしめき合いな がら、各ネットワークの独自性をアピールしている様子は圧巻。垂直型の統合についても積極的に進められており、アメリカの消費者、広告業界がかなりネット 社会に進んでいることを感じずにはいられませんでした。

ネット広告が従来の広告と圧倒的に異なるのは、ユーザーのターゲティングによる「広告の情報化」です。アドネットワークは、広告をまとめるだけでなく、様々な方法でユーザーをターゲティングし、広告への関与度を高め、「広告価値をあげる」技術。「行動ターゲティング」、「エリアターゲティング」、「属性ターゲティング」、「リターゲティング」など、興味層を特定する方法も様々に進化しています。

アドネットワークに加盟するメディアは、広告の配信枠を提供するだけでなく、実は、行動履歴を取得するという重要な機能を持っているところがミソ。表示しながら情報を取る「アンテナショップ」のような役割です。

どの人が、どのようなページを見たのかという情報は、Cookie(クッキー)とよばれるデータを利用者のPCに保存させることで識別可能になります。閲覧履歴をもとに「この人は料理に興味がある」「この人は最近リフォーム会社の事例を頻繁に見ている」といった嗜好性を分析。興味・関心別の広告メニューに分類し、そのメニューに出稿した広告主の広告を表示するという訳です。

マスメディアを中心に、大規模に展開することが基本だった広告は、このようなネットテクノロジーによって、より高効率、より繊細に実施できるようになりました。これまで、広告やプロモーションに縁のなかったBtoB企業や、中小企業にも成功のチャンスが拡がっているといえるでしょう。

(2009/08/05 中部経済新聞掲載)

第08回:アドネットワーク

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年7月30日

「なんだか最近、赤いヴィッツが増えたわよねぇ。」

クルマにあまり興味のなかった女性がこんなことを言い出したら、かなり高い割合で、本人か周りの人が赤いヴィッツを購入していたりします。「関与度」が高くなることで、今まで見過ごしてきたものが意識されるというのは人間の正しい反応だそうです。

同じように、自宅の改装を考えている人の目には、新聞に折り込まれるリフォームのチラシ広告が飛び込んでくるものです。

さて、それでは、インターネット広告の場合はどうでしょう?「リフォームのバナー広告が増えた気がする」という場合、実は、「本当に増えている」ことが多いのです。

インターネット広告は、物理的な制限をうけません。質量や面積をもっていませんから、ユーザの画面に表示される直前で「差し替える」ことができます。そんな特性を活かして、できるだけ消費者の関与度の高い広告を配信しようとするテクノロジーが、進化してきたのです。

それが、「アドネットワーク」。複数のWebサイト上の広告枠を束ね、まとめて広告を配信するシステムのことです。

インターネットでは、大小様々なWebサイトやブログなどが、広告メディアになることができます。しかしながら、巨大なアクセスを集める一部のサイト以外は、自社の広告枠だけでは営業が難しく、効率的な運営のためのシステムを持つこともできませんでした。

アドネットワークは、そのような「小さなメディア」を束ね、広告メディアとしての力を大きくすると同時に、より目的にあった運用ができるよう開発されました。ちょうど、様々な銘柄の債権をポートフォリオで運用するファンドのような感覚、といえばわかりやすいでしょうか?

配信される広告は、専用のアドサーバから配信されます。媒体(サイト運営者)側はアドネットワークから配信される広告を表示するために、ページの中に「タグ」とよばれる文字ソースを貼りつけるだけ。広告の内容や表示回数などは全て、タグで呼び出されたアドサーバでコントロールされます。

このアドサーバこそが、「今のあなたにぴったりの広告」を配信する仕掛けそのもの。アクセスしたユーザーの、「行動履歴」、「アクセスエリア」、「ユーザー属性」などを活用した「ターゲティング広告」をより効率的に行うための仕掛けなのです。

では、どのようにして「改装に興味のある人」に「リフォームの広告」が届くのでしょう?そのメカニズムについては、次回ご紹介いたします。(次回につづく)

(2009/07/29 中部経済新聞掲載)

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