第31回:無料モデルのインパクト

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2010年1月7日

あけましておめでとうございます。

いよいよ2010年、デフレの影響を感じずにはいられない年始だったのではないでしょうか?百貨店の初売りでは、実用品を詰め込んだ「お買い得福袋」が人気を集めたそうです。最近では安い値札を見ると不安になってしまう私のようなタイプには、初売りのバーゲンも素直に楽しむことができないようです。

そんな中、文具売り場で気付いたことがあります。3年、5年が比較できるような、大型の日記帳が減っているような気がするのです。「そうか、非公開のブログを書いていれば、日記帳を買わなくてもいいからかな。」数千円を出して日記帳を買うことに比べ、ブログは無料で利用できます。

データはいくらでも登録できますから、2年前や3年前と比べるのも簡単。日記ユーザーがブログ利用に移行したとしても不思議ではありません。実際には在庫が少なかっただけかもしれませんが、私はそんなユーザー像を思い浮かべてしまいました。

確かにブログサービスは「無料」。インターネットでは、他にも無料をベースにしたビジネスモデルが多いものです。グーグルも無料、ユーチューブも無料、ツイッターもフリッカーも無料で公開されています。

では、どうしてWebサービスはこれほど無料にできるのでしょう?その答えは圧倒的なコスト低減です。
1.サーバコンピュータの処理能力
2.ハードディスクの記憶容量
3.ネット通信インフラの速度
このWebサービスの根幹をなす3つの要素は、毎年劇的にレベルが上がり、同事にコストが下がっています。

結果、「商品や作品を並べる陳列棚」や「顧客データを格納するための本棚」は、「ほぼ無料で」「無限に」利用できるようになりました。「一部の顧客から一定の費用を回収する仕組みのために、他の圧倒的多数には極めて低コストで無料サービスを続けられる。」この前提が、成功しているWebサービスには共通しているように思います。

さあ、みなさんの企業には、ネットを活用して無料でサービスできることは無いでしょうか?それは、競合企業がすでに展開していたり、準備していませんか?

無料のモデルを利用することで顧客は変化し、無料モデルをベースにビジネスは変化してきました。「これまでの業界の既成概念から脱却し、新しいビジネスモデルを構築する。」2010年には、そんな勇気と決断が求められているのだと思います。

(2010/01/06 中部経済新聞掲載)

第30回:09年のネットトレンドを振り返る

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年12月31日

未曾有の不況が吹き荒れた2009年。

Webを活用したマーケティングやビジネスも大きく変化しました。09年最終の今回は、今年話題になった2つのキーワードで、1年を振り返ってみたいと思います。

【クラウドコンピューティング】
09年はSaaS(ソフトウェア アズ ア サービス)という考え方が普及した年でした。クラウドコンピューティングは「ソフトウェアやデータを手元のコンピューターに置くのではなく、(雲の中のような)インターネットの向こう側に置く」という考え方やサービスを指します。インフラやシステムを利用者単位の月額費用で手軽に運用でき、投資リスクが少ないことからも注目を集めました。「システムは所有から利用へ」の流れが加速し、システム構築のスピードとコストが激変した1年だったといえるでしょう。実務でもクラウド関連のお問い合わせは増加傾向で、講演のテーマに要望されるケースも増えました。セールスフォース・ドットコム社主催のイベントで講演させていただいた「クラウドのマーケティング活用事例」は実に1000人をこえるお申込があり、企業担当者のクラウドへの関心の高さを実感したのものです。

【ツイッターのブレイク】
「いまなにしてる?」という質問にこたえるかたちで短いテキストを投稿するミニブログサービスが伸びました。気軽に素早く投稿できるのが特徴で、ユーザー同士が「リアルタイムに、ゆるやかに」つながる機能を持つ「ツイッター」。アメリカ大統領選挙、イラン大統領総選の抗議活動で活用されたことが話題になり、日本でも爆発的にユーザーが増加しています。モバツイッターなど、日本の携帯環境で活用できるインフラや、専用のiphoneアプリが、利用スタイルにピッタリはまったことなども大きな理由でしょう。企業と消費者の関係性を緊密にする上、安価なマーケティングツールであることから期待と注目を集めました。また、マイクロソフトやグーグルとの提携も発表され、検索エンジンにリアルタイムな情報が流れ込む事が予想されています。

2009年、変化し続けるWeb環境は、消費者の行動様式、ビジネスモデルの両面に大きな影響を与えました。

今年のトレンドは、「新しい発想で、コストダウンを実現しながら、実質の価値を高め、効果を上げる。」というリアルな要望だったのかもしれません。

不況が続く中部地区ですが、Web活用で光が差し込む余地はまだまだ残されていると信じています。さて、2010年はどのような戦略を描きましょうか。

(2009/12/30 中部経済新聞掲載)

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