第20回:サイト刷新予算は計画的に

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年10月22日

深まる秋、来期の「コミュニケーション予算」についての相談が増える季節になりました。

全体的な広告費は縮小の傾向にあるなか、インターネット関連の予算は増やしているという企業が多いようです。実利に直結する、効果が測定できる、コスト効率が良い場合が多い、ノウハウが蓄積できる、等、様々な理由で取り組まれているネット関連ですが、その成否には予算の組み方が大きく影響するものです。

さて、予算の組み方ですが、特に「サイトリニューアル」については注意するべきポイントがあります。

それは1回のリニューアル作業で「予算を使い切らない」こと。リニューアル後の調整、改善を視野に入れておくと言うことです。

サイトリニューアルとはあくまで想定に対して戦略を練り、策を試すことです。事前にアクセスログを解析し、構築の専門家の意見を聞き、マーケティングのフレームを確認するなど、多くの準備をするのは当然ですが、それらはあくまで想定をつくる作業であり、結果は予想でしかありません。

リニューアルの結果、クリック率が思うようにあがらなかったり、場合によってはコンバージョン(顧客転換率)が以前より低下することもあります。リニューアルの結果から、新たな課題や方法論が見えてくる事は多いものです。

例えば、アクセスログを解析しても分からないことの一つに、「現在来ていない人の動き」があります。来ていないのですから当たり前ですが、サイトリニューアルによって生まれる「新たなユーザー」の動きは予想が難しく、リニューアル後に見いだしていくしかありません。

リニューアルによって想定外のページからの進入が増えることもあります。状況を正しく確認しながら、適切な導線に修正することで、効果を上げるチャンスなのですが、予算が確保されていないと、対応できないという「もったいない」事態になってしまいます。

全体予算のボリュームにもよりますが、10-20%ほどをリニューアル後の改善費用として確保しておくと良いでしょう。

「クリック率を考えたボタンデザインの変更」「直帰率を抑えるためのページデザインの変更」「スタッフの運用実態に対応する更新システムの改修」など、アクセスログやアンケートなどを基に改善することで、予想と実際を近づける事ができ、適切な成果が手に入ります。

「画竜点睛」。小さな「調査・設計・改修」のセットを2-3回繰り返して、リニューアルは完成するのです。

(2009/10/21 中部経済新聞掲載)

第19回:Web担当者に必要な資質

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年10月15日

Webサイトのプロデューサーに必要とされるスキルとしてよく挙げられるものに
・マーケティング能力
・ブランドマネジメント能力
・システムやデータベースに関する知見
・プロジェクトマネジメントの経験
・クリエイティブセンス
・情報設計力
・コスト管理能力
・部門を越えた交渉力や発言力
といったものがあります。

これは、とりもなおさず企業のWeb担当者にも求められる能力ですが、実際に上記の条件を備える人材はいるのでしょうか。

15年以上企業Webサイトのお手伝いをしていると、数百人のWeb担当者さまとお付き合いをさせていただくことになりますが、そんなスーパーマンと出会うことは滅多にないものです。もし心当たりのある方、弊社プロデューサーとしてスカウトしますのでご紹介を・・・という冗談はさておき、Web担当者に求められる技能範囲やレベルが高いのは事実。

しかし、実際には「若い人が向いている」とか「パソコンが好きそうだ」という理由で実際の資質と異なる人員が登用されていることが多いように思います。

「社内に前例が少なく、新規の技術や方法論が多い中で、的確な情報収集を行い、最適な仮説を立てた上で、その検証をしながら、企業としての判断を繰り返す。」のがWeb担当者の仕事。特に難しいのは、コミュニケーションや調整能力です。

実際のWeb構築・運用プロジェクトは、広報IR担当、宣伝担当、サポート担当、開発担当、営業担当、システム担当など、様々な領域のメンバーが参加する横断的なものとして設定されるのが通例です。

しかしながら、参加メンバーは通常業務でWebを扱っているわけではなく、もちろんWebリテラシーが高いわけでもありません。

各メンバーの理解を進めながら目的を設定し、プロジェクトを成功に導くためには自信のWebリテラシーだけでなく、部署横断プロジェクトにおける情報提供者や合意形成者としての役割、コスト配分も含めたプロジェクトマネージャーとしての役割が求められることになります。ネットへの興味や、プログラムの能力とは別のビジネススキルが重要になるのです。

社内に足りないリソースは外部のWebコンサルティングや制作会社など、専門家の知見や技術を効果的に取り入れることで担当者のスキルをアップし、「企業内にWeb活用のノウハウを蓄積」することが重要です。

(2009/10/14 中部経済新聞掲載)

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