第18回:ソーシャルな欲求引き出し

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年10月8日

前回は、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)とソーシャルアプリのパートナーシップについてお話しました。

SNS側は、「ユーザーデータの取り扱い」をプラットフォームとして提供。アプリ開発事業者はSNS上で楽しめるアプリをビジネスとして展開。結果的にSNSの利用者・利用率拡大につながり、アプリユーザーも拡がるというストーリーです。

そのためには、ユーザーをリピートさせるビジネスとしての「常習性」「口コミ性」「換金性」が重要だとお話しました。Facebookで世界的に大ヒット中の農場運営ゲーム「FarmVille」を題材に、ご説明いたしましょう。

SNSの中で動作する、ソーシャルアプリの基本機能は、
・「自分」や「友達」の情報を取得して、ゲーム上に表示する
・アプリ上でプレイした内容情報を保存する
・保存された内容を、「友達」に通知する
・SNSの各種アプリケーション(メールやユーザー検索など)にデータを渡す
といった単純なものですが、これらを組み合わせることによって、実に巧みに「ハマル仕組み」を構築できるのです。

1.ゲーム自体の新規性や独自性より、「友人との体験共有」に重点がある。
・友人同士の畑を行き来して自慢したり、ほめたりできる。
・友人とギフトを交換すると、自分で買うよりずっと楽。(助け合い)

2.定期的に訪問してもらうための、「わかりやすい理由」がある。
・定期的に収穫しないと、枯れてしまう。
・日に一回、友人にプレゼントができる。

3.ゲームに参加していない友人を巻き込める「勧誘・口コミツール」がある。
・新しい友人をゲームに参加させるとレベルアップが早い。
・SNS内にレベルアップなどの記録が表示される。(友人がクリックするとボーナスがシェアされる)

4.収益モデルとして、仮想通貨の直接販売とアフィリエイトを共用。
・ゲーム内の仮想通貨の価値を上げた上で、直接販売する。
・会員登録やアンケートの記入などにより仮想通貨を支払う「アフィリエイト」。

重要なのは「友人関係」というエネルギーを源泉に、「互いに楽しんでもらう」媒介システムに徹していることでしょう。お互いのちょっとした努力を認め合い、センスや資金力を自慢しあい、互いに協力しあって向上していく。

人間が根源的に持っている「ソーシャルな」欲求を巧く引き出すことは、これからのネットプロモーションでも重要な課題となるに違いありません。

(2009/10/07 中部経済新聞掲載)

第17回:動員・継続のための「仕掛け」

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年10月1日

朝9時30分、せっせと農作物を収穫する私のアバターを眺めながら、農場の拡張計画を考えるのが最近の日課・・・・もちろんPCの画面上、ゲームの話です。

ミクシィやグリー、FacebookをはじめとするSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で、ユーザー同士が関係しながら楽しめる、手軽なゲームが流行しています。

「単純なのに、つい続けてしまう。」「友達を巻き込んで、ブームになっている。」ゲーム業界でも新規性や独自性でヒットを出すことが難しい今、なぜソーシャルゲームアプリなのか。成功の条件は、「動員・継続」のために巧妙に設計された「仕掛け」にあるようです。

ミクシィが、満を持して導入した「ミクシィアプリ」が正式リリースされて約1ヶ月、当初100点あまりだったアプリも、徐々にそのバリエーションを増やしています。なつかしいゲームや、コミュニケーション機能、笑いのネタなど、決して派手なものではありませんが、ミクシィの利用率や「マイミク」との交流促進に成功しており、今後の展開が期待されます。

一方、全世界で2.5億人の会員を有するといわれるFacebookでは、「Facebookアプリ」の展開実績、アプリのバリエーションや影響力も桁違い。私がFacebook本社、Facebookアプリを開発する「RockYou」社をシリコンバレーに訪問したのは08年の11月でしたが、その時点ですでにアプリの影響力は大きく、Facebookの活性化を牽引する存在としてのパートナーシップが実現していました。

・SNS側は、「ユーザーデータの取り扱い」をプラットフォームとして提供。
・アプリ開発事業者はSNS上で楽しめるアプリをビジネスとして展開。
・結果的にSNSの利用者・利用率拡大につながり、アプリユーザーも拡がる。

というストーリーです。

アプリの開発者はユーザーをリピートさせるビジネスとして、
1.「常習性」
2.「口コミ性」
3.「換金性」が特に重要だと教えてくれました。

冒頭にご紹介した大ヒットの「農業ゲーム」。「種まき」や「収穫」といった活動があり、来訪者との協働や作物の売却というイベントがある「農場」には、「何度も訪問してもらう」ための条件が揃っているような気がします。

次回はこの農業ゲームを題材に、謎解きをしていきましょう。

(2009/09/30 中部経済新聞掲載)

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