第14回:Webサイトは企業を映す鏡

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年9月10日

企業のWebサイトはその性格上、多様なステークホルダーに向けて公開されます。

顧客や潜在顧客はもちろん、発注先の企業、競合関係にある企業、公開企業であれば株主や投資家、採用情報であれば、入社希望の学生やキャリア等等、立場も目的も異なる多様な人々が訪れます。顧客に自社サービスの素材やクオリティの高さをアピールしながら、株主には自社サービスの利益率の高さや原価の低さを解説するという反対の仕事を、同じ場所でしなくてはいけない場合もあります。

また、Webサイトはユーザーが企業に関する経験を得られる重要なコンタクトポイントであることも忘れてはいけません。

可能であれば、あなたの会社のサイトの月間来訪者数を聞いてみてください。おそらく、「実際に」来社されたり、営業マンと接触される方の人数より2-3桁以上多いことに気づくでしょう。つまり、圧倒的に多くの方が、Webサイトのみを接点として、あなたの会社を理解し、感じているのです。

企業が責任を持って公開しているWebサイトは、その企業そのものと捉えられるのが自然です。ユーザーは、液晶画面に競合企業のサイトを並べ、そのコピーやデザイン、トーン&マナーやおもてなしのスタイルで企業やサービスを見比べています。

サイト内でのメッセージの一貫性、ユーザビリティーや、コンテンツのクオリティ、ボリュームなどはブランドイメージに直結する要素です。お客様目線で、もう一度チェックしてみましょう。

チェックにあたっては、最も重要なサイト訪問者である「社員のみなさん」の意見も重要です。企業規模によっても異なりますが、社内からのアクセスは全体のアクセスの数%から、10%ほどを担っている場合が多いもの。自分が勤務している企業が世の中に対して発信しているメッセージは社員にとっても重要なのです。

それぞれの現場での実際や要望が、正しいスタイルで発信されるためには、社内から適切に情報が集まる流れが必要となります。そのためには、Webサイトを「2次的な作業」と捉えるのではなく、通常業務の中でも、Webサイトというチャネルを意識する事、「Webサイト経由の多くの人々をイメージする事」が大切です。

「Webサイトは企業の品格を映す鏡」
各領域の担当者の意識を高め、企業としてのバランスのとれたコミュニケーションを心がけたいものですね。

(2009/09/09 中部経済新聞掲載)

第13回:「AIDMA」から「AISAS」へ

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年9月3日

15年前には、いろいろと欲しいものがありました。

よりスペックの高いもの、より便利なものを手に入れることで、生活が豊かになると考えられていたころの話です。現在はどうでしょう。景気が悪い、給料が安いといっても、実は消費者は何でも持っています。TV,デジカメ、PC、ケータイ、MP3プレイヤー、エアコン、自転車・・・・。モノは溢れ、新しいモノを購入することを目標にがんばる人も少なくなっているように思います。モノが売れない時代といわれる所以です。

15年前、広告会社のマーケティング担当見習いとなった私が最初に教わったのは「AIDMAの法則」でした。

消費者がある商品と出会い、購入に至るまでに
Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(購入)
の段階があり、広告を作る側は、この段階を意識して設計する必要があるという、とても有名な法則。実は1920年代に提唱されたものだったそうです。

約80年を経て、新たな購買行動のモデルとして、電通によりAISAS(アイサス)が提示されました。
Attention(注意)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(購入)→Share(共有)
となっており、「欲求」の代わりに「検索」が登場、「記憶」はスキップして「購入」「共有」と続くのが特徴です。

長く長く続いた購買行動はインターネットの出現によって大きく変化、「情報共有」による「スピード化」が進行したのです。

そして、ネット上で「共有」される情報を、また誰かが「検索」して「購入」するという流れが定着すると、AIDMA時代に存在していた「Memory(記憶)」という工程の必要が少なくなりました。

少しずつ情報を「記憶」して判断を進めていくのではなく、ネットで一気に情報を集めて結論を出すスタイル。よほど大きな決断でない限り「1年にわたって購入検討を続ける」というケースは減ってきているようです。

モノが溢れる時代。

購入する理由はどんどん少なくなり、購入検討時期はどんどん短くなる傾向にあります。その貴重なチャンスである、「ネット上での出会い」を、いかに効果的に実現するかが重要な鍵であることは言うまでもありません。

メーカーやサービス提供者には、「消費者の要求に最も近いタイミング」で、「必要十分な情報」を提供するための、独自のノウハウが必要となっているのです。

(2009/09/02 中部経済新聞掲載)

ページの先頭へ