第10回:幸せな偶然をつくる技術

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年8月13日

引越しサービスに見積もりをお願いすると、通販カタログがもらえたりするものです。

ページを開けば、カーテンや家具など、新しい生活で必要なものが満載。普段はあまり興味のない商品も、転居のタイミングには大変魅力的に見えるから不思議です。「引越しを考えている人」=「新居のインテリアを考えている人」という公式に従ってユーザーをターゲティングすることで、普段であれば「邪魔な広告」が「必要な情報」に変化するのです。

今、そのサービス領域に興味のあるユーザー(例えば引越しを考えている人)を探しだす方法として、検索連動広告はわかりやすい例です。ズバリ「引越し会社」と検索しているユーザーは、きっと必要に迫られているのでしょう。ニーズ型の商品やサービスにとって、「検索結果に表示できる」検索連動広告が重要なのは当然です。

しかし、それだけで十分でしょうか。実際に引越しを検討している人の行動を考えてみましょう。彼は、「引越し」というキーワード検索を毎日のように繰り返すでしょうか?また、検討期間中に、引越しサービスのサイトを毎日訪れるものでしょうか?

答えはもちろんNO。ほとんどの時間は「引越し以外」のサイトを見ているに決まっています。となると、実は「それ以外の閲覧時間」が重要であるのもまた事実です。

ユーザーの閲覧履歴をもとに「この人は引越しを必要としている」といった嗜好性を分析し、そのメニューに出稿された広告を表示するのが「行動ターゲティング」広告。ユーザー行動に着目した技術は、検索連動型広告とは異なり、「引越し」と無関係の場面で広告を表示できるのが特徴です。

従来、「広告」の使命は、ユーザーの認知を獲得し、興味を持ってもらった上で売り場にお連れすることでした。この場合でいえば「ユーザーが引越について調べていないときに、引越しサービス会社について想起してもらう」ことにあたります。

「ニュースのサイトを見たり、料理のサイトを見ているときに、引越しの広告がよく表示される。」
「今ちょうど、引越しを考えているので、いつもなら気にしない内容も、魅力的で便利な情報になっている。」

この「幸せな偶然」を、意図的につくりだす技術が、行動ターゲティング。

さて、御社の顧客との関係性には、どんな「幸せな偶然」が待っているのでしょうか。

(2009/08/12 中部経済新聞掲載)

第09回:ターゲティング技術

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年8月6日

アドネットワークは、インターネット上の「小さなメディア」を束ね、広告メディアとしての力を大きくすると同時に、より目的にあった運用をするためのシステム。

前回は、「様々な銘柄の債権をポートフォリオで運用するファンドのような感覚」とご説明しました。ちなみに、広範囲な領域のメディアを束ねるアドネットワークを水平型(ホリゾンタル)アドネットワーク、特定の分野に特化したメディアを束ねるアドネットワークを垂直型(バーチカル)アドネットワークと呼びます。

私は昨 年11月、ニューヨークで開催された広告テクノロジーのカンファレンス「ad:tech」に参加してきたのですが、様々なアドネットワークがひしめき合いな がら、各ネットワークの独自性をアピールしている様子は圧巻。垂直型の統合についても積極的に進められており、アメリカの消費者、広告業界がかなりネット 社会に進んでいることを感じずにはいられませんでした。

ネット広告が従来の広告と圧倒的に異なるのは、ユーザーのターゲティングによる「広告の情報化」です。アドネットワークは、広告をまとめるだけでなく、様々な方法でユーザーをターゲティングし、広告への関与度を高め、「広告価値をあげる」技術。「行動ターゲティング」、「エリアターゲティング」、「属性ターゲティング」、「リターゲティング」など、興味層を特定する方法も様々に進化しています。

アドネットワークに加盟するメディアは、広告の配信枠を提供するだけでなく、実は、行動履歴を取得するという重要な機能を持っているところがミソ。表示しながら情報を取る「アンテナショップ」のような役割です。

どの人が、どのようなページを見たのかという情報は、Cookie(クッキー)とよばれるデータを利用者のPCに保存させることで識別可能になります。閲覧履歴をもとに「この人は料理に興味がある」「この人は最近リフォーム会社の事例を頻繁に見ている」といった嗜好性を分析。興味・関心別の広告メニューに分類し、そのメニューに出稿した広告主の広告を表示するという訳です。

マスメディアを中心に、大規模に展開することが基本だった広告は、このようなネットテクノロジーによって、より高効率、より繊細に実施できるようになりました。これまで、広告やプロモーションに縁のなかったBtoB企業や、中小企業にも成功のチャンスが拡がっているといえるでしょう。

(2009/08/05 中部経済新聞掲載)

ページの先頭へ