第02回:ネットは企業の必修課目

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年6月17日

「まるで世界中の脳が接続されているみたいだ!これまでの生活や思考のスタイルは全て変わる!」

1994年のある深夜のオフィス、広告代理店のマーケティング局で、初めてインターネットに触れた新入社員はすっかり興奮していました。広告のマーケティングやクリエイティブを志す当時の私にとって、この新しいメディアはとてつもなく魅力的だったのです。

まだ短い文章や小さな画像を公開することぐらいしかできなかったインターネットという仕掛けは、それでも強烈なインパクトを与えるに十分でした。自分自身が制作した小さなウェブサイトが世界中に公開されるという体験は、これからおこる様々なサービスの可能性や生活者の変化を一気にイメージさせ、私の人生に鮮やかな目標を与えたのです。

以来15年、企業のコミュニケーションを取り巻く環境は、インターネットによって完全に変化しました。そして、その意味に気づいている人、気づいていない人の間に圧倒的なビジネススキルの格差を生み出しています。

ネットを活用することで、集客のための広告は効果測定が容易に正確になり、ユーザの「行動属性」に合わせた高効率なキャンペーンが少ない金額から実施可能です。

動画や音声など、顧客に提供する情報は非常に低額で配信でき、ユーザーの購入や問い合わせ窓口としても24時間機能。月額数万円から利用できるSaaS型の顧客管理システムは、数週間で本格的なCRM環境を実現できますし、商品開発に必要なユーザー調査も設計から集計まで48時間あれば十分。全ての企業がマーケティングや顧客管理を科学的・効果的に実践できる時代が到来しています。

しかし、企業経営者にとって重要な話は、最新情報の中に身を置き、高いITリテラシーを持たない限り聞こえてきません。ネット時代の「ブランド構築」、「マーケティング」、「営業戦略」、「システム運用」は、企業が自ら実施すべき必修科目。「全体を俯瞰し、一気通貫するわかりやすい体系が提供できれば中小企業の経営はカイゼンできる。」その想いからこの連載をさせていただくことにしました。

インターネットの現場から、わかりやすい事例とともにお届けしようと考えています。時代の変化を肌で感じながら、企業経営に本当に必要なネット活用について、ご一緒に考えていきましょう。

(2009/06/17 中部経済新聞掲載)

第01回:アクセスログは訪問者の声

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年6月10日

中部経済新聞

新聞記事

「平均何人、どのような方がこのコーナーを読んでいるのですか?」。

この連載を引き受けるにあたり、少々間抜けな質問をしてしまいました。担当編集者に苦笑いされた通り、紙面のどの領域を、どのような人が読んでいるかをつかむなど無理難題です。

しかしWebサイトでは「アクセスログ」という基礎データを活用することで、閲覧者の行動を読み解くことが可能。「訪問者の足跡」ともいえるアクセスログから行動パターンを分析するアクセス解析は、より良い訪問者サービスのためのマーケティング活動の基本となっています。

アクセスログの解析ツールは、無料・有料の物で数多く存在し、その利用方法も簡単。「Google」が無料解析ツールの提供を始めたこともあって、現在ではほぼすべての企業サイトが何らかの解析手段を持っているといって良い状況です。しかしながら、これらのデータが有効に利用されているケースは非常に少ないのが現実。その理由は2つ考えられます。

(1)「このデータから訪問者の行動をどのように推測し、より良い結果に結び付けるのか?」
データを読み解く側に「マーケティング」や「システム」、「ネット広告」といった異なる領域の知見が必要とされるため。

(2)「いったいどの数値を上げれば(下げれば)良いのか?」
そもそもWebサイト自体の目的や評価指標が設定されておらず、改善の方向が決められないため。

よくある「アクセス数を増やしたい」という要望にも注意が必要です。なんでも増えれば良いというわけではありあせん。

例えばユーザーが困った時に訪れるQ&Aコーナーなど、複雑な内容を分かりやすく誘導すること、つまりサイト内の導線を整理してあげることで、来訪者のページビューを格段に”下げる”ことが目標になる場合もあります。

アクセスログ解析の目的は「閲覧者の声を聞き、Webサイトの効果を上げること」です。冒頭の私の質問は言い換えれば「このコーナーを読んでくれる読者層を把握することで求められる内容を提供し、価値と満足度を最大限高めるにはどうすれば良いだろうか?」ということです。

さて、御社のアクセスログは何を語っているでしょう。専門家と一緒に、自社Webサイトの訪問者が何を考え、どのような行動を取っているのか、そのシナリオをイメージしてみてはいかがでしょうか。

(2009/06/10 中部経済新聞掲載)

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