第28回:Webリテラシー

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年12月17日

「読み書き算盤、インターネット」

15年前、広告会社で働いていたころに私の上司がよく使っていた言葉です。算盤(そろばん)といわれても、若い方にはピンと来ないかもしれませんね。電子計算機が登場するまでは、王者の座に君臨していた四則演算の最強ツール。私が子供のころにはまだまだポピュラーな習い事でしたから、多少の覚えもありますが、それでも算盤とインターネットを並べられると、当時はなんだか可笑しく聞こえたのを憶えています。

しかしながら「これからのビジネスには「読み書き算盤」つまり「読解、筆記、計算」に「情報検索やツールの活用技術」を加えた4つの基本能力が必要だよ。」というこのメッセージは、とても重要なものでした。

現在では「Webリテラシー」とよばれる、この4つめの必須能力の重要性を、幅広い年代に伝えるための表現だったわけです。さすがは広告会社の部長と、今更ながらに感心したりします。

Webリテラシーは「情報について理解・整理し、活用するために、インターネットを活用する能力」と表現できそうです。

しかし、企業のWeb担当者ともなれば、一般レベルより高いWebリテラシーが求められます。ユーザーとして活用するためだけでなく、ユーザーが利用するためのWebサイトを運営するのですから、当然といえば当然ですね。

1.「複数のチラシを見比べながら、賢く買い物をする能力の高い主婦に必要なリテラシー」が身についてはじめて
2.「見比べられた上で、主婦が殺到するチラシをつくる能力の高い担当者に必要なリテラシー」にトライすることができるようになるのです。

実際の現場では、若い担当者の「インターネットは苦手で」という言葉に、実に高い確率で出会います。学生時代からネットを活用して勉強し、Webやメールを活用して友人関係や恋愛関係を築いてきた世代は1.のリテラシーは高いのですが、当たり前のものであるだけに、2.のリテラシー、意識的に作り手側の立場で仕組みを考えることが苦手のようです。

企業情報の発信者として勉強しなくてはいけないことは、今も昔も変わりません。多くの一般ユーザーが情報発信する現在では、むしろ勉強すべき内容は種類も多く、アップデートが早いのです。

お客様に喜んでもらうために磨き続ける「マーケティング」や「クリエイティブ」「システム」に関する知識。「現代Web担当者の読み書きそろばん」であることは、間違いなさそうです。

(2009/12/16 中部経済新聞掲載)

第27回:悪い評価は伝わらない

カテゴリ:ネット活用実践講座 – 2009年12月10日

「サイレントマジョリティー」

Webサイトのユーザーを、こう呼ぶことがあります。実際の接客と違い、Webサイトは基本セルフサービスのメディアで、お客様が積極的にクレームを下さることが少ないという意味です。「良い評価」は結果としてカウントされますが、無言で去っていくお客様の「悪い評価」は情報として伝わりづらいのです。

例えば、スーパーや小売店で、レジまで来たお客様の3人に1人が買い物カゴをその場において立ち去っていたら大変なことですね。レジのスタッフにヒアリングをしたり、お店から出て行くお客様に理由を聞いて、必死で改善策を模索するでしょう。しかし、Webサイトのお客様は「なぜ、最後まで入力フォームのステップを完了しなかったのか」、その理由を教えてはくれません。何故最後まで記入してくれなかったのですか?という入力フォームを設置するというのは、それこそナンセンスです。

しかし、何も教えてはくれないお客様であっても、Web上でのアクションを観察することから問題点を探すことはできます。Webサイトの可用性は、お客様と企業のコミュニケーションを可視可できること。お客様の行動自体をメッセージとして分析する企業努力は可能なのです。

例えば、フォーム毎に「誤入力率」や「入力にかかる時間」などを測定し、ユーザーにかかるストレスを分析する手法があります。どの項目で記入ミスが多く発生してしまうのか、どの項目は記入するのに多くの検討を必要とするのかなどを、統計的なデータとして分析することで、接客方法のレベルアップを検討するのです。

入力フォームの内容や項目数を考えるときは、「お客様のお手数」と「社内の利便性」がトレードオフの関係になることを念頭に置きましょう。初期段階で本当に自社にとって必要な情報なのか、後からお客様にお聞きするフローは存在しないのかをよく検討し、初期段階でのストレスをできる限り少なくすることが重要です。

もちろん、個人情報の取扱いポリシーの提示タイミングなど、企業の姿勢を誠実に示し、問い合わせをしようとしているユーザーの心理的なハードルを下げる努力が必要であることもいうまでもありません。

お客様の反応を見ながら、少しづつ調整することで、企業・サービスごとに最適なバランスを模索することが、問い合わせ数のアップ、コンバージョンの向上につながるのです。

(2009/12/09 中部経済新聞掲載)

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