前回は、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)とソーシャルアプリのパートナーシップについてお話しました。
SNS側は、「ユーザーデータの取り扱い」をプラットフォームとして提供。アプリ開発事業者はSNS上で楽しめるアプリをビジネスとして展開。結果的にSNSの利用者・利用率拡大につながり、アプリユーザーも拡がるというストーリーです。
そのためには、ユーザーをリピートさせるビジネスとしての「常習性」「口コミ性」「換金性」が重要だとお話しました。Facebookで世界的に大ヒット中の農場運営ゲーム「FarmVille」を題材に、ご説明いたしましょう。
SNSの中で動作する、ソーシャルアプリの基本機能は、
・「自分」や「友達」の情報を取得して、ゲーム上に表示する
・アプリ上でプレイした内容情報を保存する
・保存された内容を、「友達」に通知する
・SNSの各種アプリケーション(メールやユーザー検索など)にデータを渡す
といった単純なものですが、これらを組み合わせることによって、実に巧みに「ハマル仕組み」を構築できるのです。
1.ゲーム自体の新規性や独自性より、「友人との体験共有」に重点がある。
・友人同士の畑を行き来して自慢したり、ほめたりできる。
・友人とギフトを交換すると、自分で買うよりずっと楽。(助け合い)
2.定期的に訪問してもらうための、「わかりやすい理由」がある。
・定期的に収穫しないと、枯れてしまう。
・日に一回、友人にプレゼントができる。
3.ゲームに参加していない友人を巻き込める「勧誘・口コミツール」がある。
・新しい友人をゲームに参加させるとレベルアップが早い。
・SNS内にレベルアップなどの記録が表示される。(友人がクリックするとボーナスがシェアされる)
4.収益モデルとして、仮想通貨の直接販売とアフィリエイトを共用。
・ゲーム内の仮想通貨の価値を上げた上で、直接販売する。
・会員登録やアンケートの記入などにより仮想通貨を支払う「アフィリエイト」。
重要なのは「友人関係」というエネルギーを源泉に、「互いに楽しんでもらう」媒介システムに徹していることでしょう。お互いのちょっとした努力を認め合い、センスや資金力を自慢しあい、互いに協力しあって向上していく。
人間が根源的に持っている「ソーシャルな」欲求を巧く引き出すことは、これからのネットプロモーションでも重要な課題となるに違いありません。
(2009/10/07 中部経済新聞掲載)