HubSpotはその効果もさることながら、なによりユーザーにとって非常に使いやすいUI/UXであることにも定評があります。
しかし、Marketing Hubに搭載された「コンテンツ戦略ツール」を初めてご覧になった時、「いったい、これはどうやって使うものなのか?」と疑問に感じられた方は多いことでしょう。
ツールの効果を最大化するためには、ツールに対応した考え方やメソドロジーを知っておくことが大切です。そこで、「コンテンツ戦略ツール」を使いこなすための前提知識についてまとめていきます。第一弾はコンテンツマーケティングの状況とSEOの変化についてです。
コンテンツマーケティングは過去数年間の間に大きな変化を遂げました。これらの変化の多くは、洗練され続ける検索アルゴリズム、デジタルガジェットの進化による検索環境の変化、それに伴う人々の行動の変化などに起因します。
自身の日常生活の中で得ているユーザー体験を思い返してみれば、当然とも言える内容でもありますが、あえて言語化しながら1つずつ掘り下げて考えていきましょう。
コンテンツマーケティングの変化への対応策のお話をする前に、まずはその中核となっている検索エンジンについて触れておく必要があります。
コンテンツを評価する基準を「検索アルゴリズム」と呼び、このアルゴリズムの中でコンテンツを高く評価されるように最適化することをSEOと言います。
アルゴリズムのアップデートは通年行われている小規模なマイナーアップデートの他に、年に数度の大型アップデートが行われます。しかし変更された内容や、アルゴリズムに関しての詳細は公表されないのです。
特にここ数年は大きな変化があり、数年前に成功を収めたSEO施策はほとんど当てにならなくなっています。
「特定のキーワードに狙いを定め、そのキーワードの含有量やタグラインの付け方に配慮したコンテンツを作成し、検索結果の上位に表示されるようする」といったキーワードを基盤とした一般的なSEO施策が最新の検索エンジンの仕様とアルゴリズムにマッチしなくなってきているのです。ここからはその理由の一部をご紹介します。
SEO施策の効果を評価する方法の最たるものは、特定のキーワードを入力した時に自分のコンテンツが上から数えて何番目に表示されるかということですね。
しかし、この検索順位は、コンテキストによって変わることをご存知でしょうか。
どこからどのように検索しているかによって異なる検索結果が表示されるので、特定のキーワードの検索順位だけで成功を評価することは困難なのです。
試しに「ラーメン屋」というワードで検索をしてみましょう。
画像は名古屋市内からPCで検索した結果画面のスクリーンショットですが、もし仮にあなたが東京から「ラーメン屋」を検索しているとしたら、この検索結果とはまったく異なる結果が表示されているのではないでしょうか。
この「ラーメン屋」というクエリの検索結果ページには位置情報によって、いくつもの異なるパターンがあるのです。
特定キーワードの検索順位にコンテキストが反映されている事実の他には、「スニペット」が注目されています。
試しに、「そうめん ひやむぎ 違い」と検索してみましょう。
「スニペット」とはユーザーがコンテンツにアクセスすることなく、Googleがユーザーの知りたいことに答えてくれるというものです。
まだ日本語での検索では多く見かけませんが、英語で検索した場合は、実に30%の検索結果ページにスニペットが表示されているという調査結果が2017年に出ています。
スニペットの出現する検索結果は今後も増え続ける見込みです。
CMでおなじみのGoogle Homeでの音声検索への回答がこのスニペットに多く依存していることからも検索エンジンの変化のトレンドであることが予想できます。
スニペットが表示される検索結果ページは、そうでないページと比べて大きなトラフィックを呼び込みます。
現在検索結果ページに表示されるスニペットのほとんどはWikipediaが占めていますが、これからマーケターは自分のコンテンツがスニペットの中に表示されることを狙う施策も考えていく必要があるでしょう。
また、GoogleはRankBrainという機械学習型の人工知能システムを使用した検索結果の並べ替えに大きく投資をしています。
このRankBrainは特定のクエリの背後にある検索者の意図を汲み取り、検索クエリとして明記されていなくても関連度の高い情報を提供することを目的にしています。
せっかく、SEO施策に投資して、上位の検索結果に表示されるようにしても、こうした新しい検索結果ページの仕様や検索アルゴリズムの変更によって、一気に転落してしまうこともあります。
ですが、こうしたアップデートは全てGoogleが検索者によりよい情報を提供するためなのです。
こうした「検索エンジンの変化」は、「検索者である私たちの変化」が背景にあります。
スマホなどの携帯端末の普及や音声検索が増えてきたことにより、検索クエリはより会話のようなものに近づいてきました。
従来、多くの検索者は断片的な用語を検索エンジンに入力していましたが、最近では完全な文章を使って質問をすることが多くなってきているのです。
先ほど触れたRankBrainも含め、過去数年にわたるGoogleのアップデートは自然言語処理に関するもの、つまりこれらのフルセンテンスタイプのクエリを理解することに重点を置いています。
キーワードだけでなく、フレーズ全体の分析を始めた新しい検索アルゴリズムが導入されている今、キーワード中心のSEOからトピック中心のSEOへの転換を迫られているのです。
フルセンテンスでの検索、音声検索といっても、既にインターネットを長く活用していたり、適切なキーワードを入力して、欲しい情報をインターネットから集める能力に長けている人にとっては、あまり使用している実感が湧かないかもしれません。
しかし、ティーン世代を中心に、インターネットに触れた時から音声検索ができるようになっていた世代を中心に確実に利用割合が増えているのです。
海外ではこうした新しい技術を使用することに積極的であり、グローバルでは2016年の時点で、すでにモバイルアプリとAndroid搭載端末の検索クエリの20%が音声検索であるということも発表されています。
調査は米国のものなので、文化の違いもありますが、日本でもCMなどの影響により音声検索の普及率はそれなりに高く、今後もさらに普及率が上がってくると予想できます。
数年前まではひとつのトピックの中に10〜20つのよく検索される大きなキーワードがあり、それらの中で検索結果ページの上位に表示されることを目標としていました。
しかし、現在では音声検索による数百や数千といったロングテールバリエーションの検索クエリが存在し、さらに位置情報など検索者の状況によっても表示される内容は変わります。
その中から「いくつかのキーワード」を抑えるだけでは、成功とは言い難くなってきているということなのです。
次回のブログでは「これからのコンテンツ戦略はどうあるべきか」について、書いていきたいと思います。
尚、HubSpot活用の方法について、こちらの記事にまとめていますので是非ご確認ください。「HubSpotの正しい活用の仕方は?」
コンテンツマーケティングは変化をし続けています。
今回のブログからはSEOを中心に以下の点を押さえておきましょう。
・検索エンジンは変化し続けている。
・その根本はスマホからの検索や音声検索などの行動変化。
・環境の変化により検索クエリもバリエーションが増えている。
・トピック内のいくつかのキーワードを抑えるだけでは難しい。