新規開拓営業は、新たな顧客を獲得し、ビジネスを拡大するための営業活動です。近年、市場環境の変化やデジタルテクノロジーの発展などの影響により、新規開拓営業のトレンドも変化し続けています。この記事では、新規開拓営業の基本から最新トレンド、注目の手法まで幅広く紹介。さらに、成約率を高めるためのポイントもお伝えしているので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
新規開拓営業とは?
変わり続ける新規開拓を促進する営業トレンド[2024年版]
新規開拓営業と既存営業との違いとは?
押さえておきたい新規開拓営業手法
新規開拓営業を後押しするマーケティング手法
新規開拓営業の成約率を高めるポイント5つ
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ビジネスの成長に欠かせない営業活動は、顧客との良好な人間関係を構築し、自社の利益を左右する重要な役割を担います。そのなかでも新規開拓営業は、まだ取引がない見込み客を対象におこなう営業活動です。
新しい市場や顧客を開拓していくことで、純粋に売上の増加を見込めるほか、ブランド認知度を高めたり、アプローチによる競合他社との差別化を図ることもできます。基盤となる既存顧客への営業も大切ですが、自社のビジネスを長期的に成長させていくためには、新規開拓営業によって新たな顧客を取り込み、営業基盤を拡大させていくことが不可欠です。
時代の流れとともに変遷するビジネス環境ですが、近年ではオフラインからオンラインへのシフトが特に大きな変化といえます。オンラインでの商談やWeb会議の増加など、実際に変化を体感できる点も多いのではないでしょうか。ビジネス環境のオンラインシフトは、コロナ禍で急速に浸透しました。
また少子高齢化が進み、ビジネスにおいて最も重要なリソースである「人材」の不足は深刻化しています。経済活動も人材育成も苦境を強いられたコロナ禍がすぎても、少ないリソースで安定した企業活動を続けることは現代のビジネスにおいて注視すべき問題といえるでしょう。そこで今、営業手法にも関心が高まっている2つのトレンドをご紹介します。
セールスイネーブルメント(Sales Enablement)は、営業チームを強化するための戦略やプロセスのことを指します。営業チームがより効果的かつ効率的に活動するために、セールスコンテンツの提供や、CRMやSFAなどの顧客管理ツールの活用、営業担当者の育成、他部門連携のコミュニケーション体制など様々な要素があります。
本記事後半の「>新規開拓営業の成約率を高めるポイント5つ」も参考にしてください。
話題の人工知能(AI)の活用、いよいよ営業現場にも浸透してきたのではないでしょうか。顧客との向き合いは営業主体と変わりませんが、AI活用は営業活動をサポートし、顧客とのつながりを促進させることが期待できます。
顧客のカスタマージャーニーは変化し続けていますが、過去の取引や顧客行動の膨大なデータを分析し、ニーズ予測やインサイト提供により効果的な提案が行えます。これらの機能が、CRMやMA、SFAといったツールに搭載され、属人化しない効率的な営業活動を支援します。
営業支援ツールSales Hubは、AIも活用した生産性向上と顧客への柔軟な対応ができる機能開発が進んでいます。
Professionalプラン以上で新しく登場した「営業活動管理ワークスペース」では、営業がリードの状況を常に把握したり、アプローチのタスク管理やMTGスケジュールが一元管理でき、優先すべき営業活動にフォーカスすることができます。
また、顧客へのフォローのプロセスの自動化も行うことができ、送信したメールに相手からの反応があれば「接続済み」リードとして、フォローステータスが自動的に移行します。
さらにEntepriseプラン以上では、設定した顧客フォローのプロセスが取引成約や商談設定にどれほど効果をもたらしているか、逆にうまくいっていないプロセスを発見することもできます。AIを活用した売上予測についても、入力した営業進捗に基づいて、最良のシナリオと最悪のシナリオが提案されるなど、フォーキャスト精度を高める機能も実装される予定です。
これらは一例ですが、AI活用による営業支援が強化されたSales Hubは、営業活動の効率化や収益拡大への改善分析を行い、営業と顧客とのつながりを強化、企業の成長を促進させるようになります。
こちらもAIサポートにより、状況や売上予測がスムーズに把握できるようになります。
ほかにも、HubSpotのMarketing Hubでは、メールの件名やブログコンテンツアイデアの生成サポートがはじまり、マーケティング業務の効率化や成果向上が期待できます。
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かつては手当たり次第におこなわれることも多かった新規開拓営業ですが、ビジネス環境の変化や課題に合わせて、自社の強みや社内体制をより明確に把握することが重要視されています。顧客の行動も時代とともに変化しており、コロナ情勢から対面を避け、モノやサービスの購入手段としてオンラインを利用することが増えました。新規開拓のスタンダードな手法であった飛び込み営業では顧客になかなか会ってもらえず、従来のやり方では通用しなくなってきたのは身近な変化といえるでしょう。
限られたリソースを有効活用し、顧客へアプローチしていくためには、新規開拓のための効果的な営業手段をきちんと選定し、顧客の行動を押さえて活動することがポイントです。営業といえば対面活動のイメージがありますが、これからは自社の強みや個性を活かせる営業手法をオンライン・オフライン問わずに検討する必要があります。営業手法が多様化した現代では、それぞれの手法の良い部分を組み合わせることも意識したい方法です。
商品・サービスを販売するために顧客へアプローチしていく点では同じ「営業」ですが、新規開拓営業と既存営業では、顧客層やアプローチの方法が異なります。
新規開拓営業は、まだ自社の商品やサービスを利用したことがない見込み客に対してアプローチする営業活動で、新しいビジネスチャンスを開拓することが目的です。営業担当者は見込み客の情報収集を充分に行い、ニーズに合わせた提案をする必要があります。
具体的には、接点ができた見込み客とのコミュニケーションを継続し、商談の機会を設けられるよう、人間関係を構築していきます。ターゲットの絞り込みや、自社製品やサービスを知ってもらうための効果的なプレゼンテーションを作成することが重要です。
一方、既存営業は、既に自社の商品やサービスを利用している顧客に対して追加の商品やサービスを提供する営業活動です。そのため、営業担当者は顧客である取引先企業の購入履歴や好みを把握して提案をおこなう必要があります。その際には企業が抱えている課題のヒアリングや、動向の把握も意識したいポイントです。定期的なフォローアップをおこなうことが、顧客との関係性の維持につながります。
顧客との関係を強化し、満足度を高めてリピーターになってもらえるよう、新商品の提案・情報提供だけではなく、アフターサポートなどの顧客に寄り添ったサービスで信頼を得ることが既存営業のカギといえます。
市場や顧客のニーズが日々変化する現代において、従来の新規開拓営業手法だけではビジネスの成果を上げることは難しくなっています。最新の情報や技術を取り入れた新たな手法を押さえておくことも、成約率を高め、効率的にビジネスを進めるためには重要です。ここでは、従来のものから最新のものまで、押さえておきたい手法を紹介します。
新規開拓営業におけるアウトバウンド営業は、見込み客になりそうなターゲットへ自社から積極的にアプローチする営業方法です。主に電話や訪問、DMなどの手法を用いて、新規顧客の開拓を図ります。アウトバウンド営業では、自社の商品やサービスをアピールし、顧客に興味を持ってもらい、商談につなげることが目的です。
訪問営業は、見込み客の元へ訪問し、商品やサービスのアピールおよび提供をします。エリア別に営業組織が組成されている場合などに、そのエリアでの商談獲得を目的として行われることも多く、営業担当者が顧客と直接コミュニケーションを取るため、顧客のニーズや要望をより明確に把握することができます。継続して訪問し、顧客との信頼関係を構築することが重要です。
テレアポ営業は、見込みの高い企業規模や業種などを絞り込んだ上で電話をかけ、自社サービスで解決できそうな課題を持っていないかをヒアリングしたり、サービス・製品の紹介をします。
直接訪問とは異なり、電話でのアプローチにより、効率的に多くの顧客と接触できることが特徴となります。しかし、一方的なアプローチになりがちなため、相手の反応を把握し、適切なコミュニケーションを取ることが重要です。
展示会やイベントに訪れるのはその業界やテーマに関心がある、もしくは関係の深い企業の担当者が多く、確度の高い見込み客です。そのため、展示会や外部イベント出展では、自社商品と関連の強い業種・テーマの展示会に出展することで、見込み客へ効率よくアプローチできます。
訪れた見込み客にサンプルとして自社製品やサービス体験をその場で提供し、自社製品やブランドについて認知・理解を深めてもらう、製品に関する質問を受けるなど、見込み客とコミュニケーションをとることができるのもメリットです。ここでのアプローチはその場限りで終わらせず、展示会・イベントの開催期間後も接触のあった見込み客に対してフォローを継続していくことで、着実に商談・成約へとつなげていきたいところです。
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ダイレクトメール(DM)は、商品やサービスの説明や特典の案内、購入の勧誘などを記載し、見込み客へ送付する手法です。情報提供に加え、期間限定のキャンペーンやDM限定の特典など、見込み客の購買意欲を刺激するアピールができます。DMを作成する際は、ターゲットとする層のニーズに合わせたメッセージを作成し、いかに興味を引くかがポイントとなります。
営業手紙は、手紙を使って見込み客へアプローチする手法です。同じ内容を複数の見込み客へ一斉送付するダイレクトメールよりも、個人的なコミュニケーションを取ることができます。オンラインが主流となっている現代社会では、特別感を演出することができるのもレター営業の特徴です。アプローチしたい企業の代表や役員の名前を宛名にすることで手元に届けてもらいやすく、接点を作りビジネスを進めるツールとして使うこともできます。見込み客の興味・関心や手紙の内容に関連付けて、自社のパンフレットなどを同梱するのも効果的です。
ここまでは、営業が個別の見込み客にアプローチをおこなう方法をご紹介しましたが、もう少し広いターゲットにアプローチしていく「広告」や「インバウンドマーケティング」など、営業活動を後押しするマーケティング領域の手法もご紹介します。
広告運用は、テレビやラジオ、新聞や雑誌、インターネットなどの媒体を使って、商品やサービスを宣伝する営業方法です。広告を出すことによって、多数の見込み客に同時にアプローチすることができます。ブランド認知が高まることで見込み客に関心を持ってもらいやすくなり、お問い合わせの増加も期待できるでしょう。また、インターネット広告からセミナーの申し込みや資料請求につなげ、アプローチリストを創出することも可能です。広告運用を施策としておこなう場合は、内容や媒体を選定し、適切なターゲットにアプローチすることが重要です。
インバウンドマーケティングとは、見込み客にとって興味深い情報や有益なコンテンツを提供し、信頼を得ながら関係性を深め、最終的に顧客になってもらうマーケティング手法です。「見込み客がWebサイトやSNSで商品やサービスに興味を持ち、詳細についてお問い合わせをする」などの効果が期待できます。こうして能動的にアクションを行ってくれた見込み客に対し、営業がニーズに合わせた提案やアフターサービスの提供を適切におこなうことで商談などの次のステップに円滑に進めることができます。
次に、具体的な施策やコンテンツ例をご紹介していきます。
セミナーやウェビナーを運営して、商品やサービスについて説明・誘導することで、見込み客に興味を持ってもらうことができます。セミナー運営と考えるとハードルが高く感じるかもしれませんが、営業視点で市況感やビジネスのトレンド、起こりがちな課題などについて語り、自社製品につなげるという組み立てもおすすめです。質疑応答やアンケートを設けることで、見込み客のニーズや関心事を把握することができます。
見込み客が関心を持っているテーマや、解決したい課題をホワイトペーパーに盛り込み、お役立ち資料として提供することで、自社の専門知識やサービス・製品のアピールをすることができます。ホワイトペーパーが資料として専門性が高く詳細であるほど、見込み客から信頼性・専門性の高い企業であると認識され、競合他社との差別化も可能です。また、ホワイトペーパーのダウンロードから見込み客の情報収集をすることで、その後の関係構築に活用できます。
Facebook、X(旧Twitter)などのSNSは、自分自身の興味や関心に合った情報を受け取ることができる媒体です。SNSでは自社製品の機能やサービスの内容だけでなく、自社の姿勢や知見も発信することができます。ターゲットとする層にダイレクトにアピールすることができ、情報が拡散されやすいのがSNSの特徴で、見込み客から直接お問い合わせを受けたり、コメントのやり取りができるのもメリットです。企業アカウントとは別に企業の代表や営業トップの個人アカウントを活用することで、より親しみを持ってもらい、関係構築に役立てることもできます。
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Webサイトやブログは、見込み客の興味・関心がありそうな情報を提供することで見込み客へリーチする手法です。見込み客にとって有益な情報を発信することで、信頼関係を築くことができます。
たとえばA社が「社内ネットワークや情報管理」について詳しくブログに掲載しているのを、社内の情報管理に課題を抱えるB社の担当者が閲覧します。課題に対してブログの情報が参考になったので、A社の提供しているサービスにも興味を持ち、B社でA社の情報管理システムサービスの導入を検討する、という流れが期待できます。
ブログの記事内でただ製品やサービスについて紹介するのではなく、見込み客の興味・関心を切り口とすることで、結果的に自社の製品やサービスをより深く伝えることができるのです。また、閲覧数などのデータを把握し、見込み客の関心事や課題について把握できるというメリットもあります。
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YouTubeは商品やサービスについてのプロモーションや、デモンストレーションの公開に活用したい媒体です。動画で情報発信することで、見込み客に対して具体的なイメージを持ってもらうことができます。動画へのコメントやのアクセス解析を活用して、見込み客の動向や関心事を把握することも可能です。
営業活動において、ターゲットとのコミュニケーションビジネスを進める上では不可欠であり、成約率にも大きく関わってきます。特に、新規開拓営業においては人間関係の構築や見込み客の情報が充分でない状態からのスタートとなるため、コミュニケーションの取り方についてはより重視していく必要があるでしょう。見込み客へ効果的にアプローチし、成約率を高めるためのポイントを紹介します。
成約率を高めるためには、まずターゲットとする見込み客を明確にすることが必要です。自社の商品・サービスに対して興味があり、購買意欲が高い層をリストアップし、精度の高い営業リストを作ることが課題となります。
既存顧客の属性や、行動データの分析がリストアップのヒントです。実際に受注のあった既存顧客の購買パターンを把握し、その「勝ちパターン」を参考に、見込み客をリストアップしていきましょう。
既存顧客に比べ情報量の少ない見込み客をターゲットとする新規開拓営業では、見込み客の情報管理が非常に重要です。見込み客が抱えている課題や、アプローチ履歴を管理することで、見込み客のニーズを正確に把握し、最適な提案や効率的なコミュニケーションが可能になります。
見込み客の情報管理には、営業活動のプロセスを効率化するシステムを導入するのもおすすめです。たとえば、営業の効率化を図るためのSFA(Sales Force Automation)や、顧客フォローをおこなうCRM(Customer Relationship Managemen)があげられます。具体的には、SFAは獲得した見込み客を成約に引き上げることを目的とし、営業進捗やアプローチ履歴の管理、売り上げ予測・管理をおこないます。
一方CRMは見込み客や成約後の顧客に対して適切なフォローをおこなうことをメインとしており、コミュニケーションログや顧客の行動(購買)履歴など顧客情報の一元管理ができます。
SFAやCRMは企業の規模や業種を問わず、営業活動や顧客関係の管理において重要なツールとなっており、効率化・最適化を目指すなら検討したいシステムです。
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成約率を高める、つまり顧客が「買いたい」と思う提案をするためには、顧客の視点に立ったコミュニケーションが必要です。特に新規開拓営業の場合、初めて顔を合わせた営業マンに「この商品、どうですか?」とYes/Noで売り込まれても、顧客は「買いたい」と思うどころか、拒否感を覚えてしまいます。
商品やサービスを売りたいなら、いきなり売り込むのではなく、まずは顧客との対話を大切に、信頼関係を構築することがポイントです。事前に集めた情報から、どのような切り口で話すか、必要としている情報は何か、といった営業シミュレーションをおこなうのもおすすめ。そして顧客と対話をしたら、狙い通りの会話ができたか、上手くアプローチできたか、など結果を振り返ることも必要です。顧客の悩みや問題を深く理解し、それに対する解決策を提供することが成約率の向上につながります。
インサイドセールスとは顧客に対し電話やメール、Web会議などを活用したセールス手法です。たとえば、見込み客からイベントの申込みやお問い合わせがあった際の一次対応などはインサイドセールスが引き受け、商談の獲得から見込み客のリスト選別までをおこないます。
インサイドセールスが収集した情報を元にフィールドセールスが顧客の元へ出向く、といった役割分担が可能で、メリットとしてはフィールドセールスがアプローチするリストの質を高め、見込み客の選定や引き上げが期待できます。フィールドセールスの営業マンがアポ無しで飛び込み営業をして回るよりも、効率的に見込み客へアプローチすることができ、商談数・成約数の向上を見込めるのがインサイドセールスを導入した体制です。
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成約率向上には、営業代理店などを活用して、ビジネスチャンスの拡大を図るのも効果的です。自社で接点がなく、アプローチできなかった顧客に対しても、営業代理店を通じて問題や課題を聞き出し、ソリューション提案をしてもらえるため、見込み客を取りこぼさない営業活動が可能となります。
また、営業代理店は、自社とは異なる視点やアプローチを持っている場合があるため、新しいビジネスチャンスを発見できることもあります。営業代理店との連携によって、市場情報を共有したり、アプローチ方法や戦略を参考にすることもできるので、自社の営業活動の効率化や精度向上も期待できます。